2016 Fiscal Year Annual Research Report
利権獲得競争期における日本外交―東アジアをめぐる20世紀的国際関係の形成―
Project/Area Number |
16J08651
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
古結 諒子 学習院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 日本史 / 近代史 / 外交史 / 国際関係史 / 経済史 / 東アジア / 下関条約 / 日清戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)単著の刊行、(2)学会での研究報告、(3)資料収集とその事実関係の整理を主に行った。 (1)単著は、『日清戦争における日本外交-東アジアをめぐる国際関係の変容―』(名古屋大学出版会、2016年)を刊行した。これまでの研究成果を纏め上げたものであるが、展望部分で、本研究内容の全体像の特徴を示した。日清戦争後の清を舞台とした利権獲得競争期は、貿易活動と投資活動の利害調整という特徴を有しており、日清戦争によって清に対する新たな不平等条約締結国となった日本もそこに加わっていった。 (2)研究報告は東アジア近代史学会で行った。日本史に限定せず、東洋史、国際関係論、政治学といった隣接分野の方々から有益な意見をいただき、論旨の明確化や研究の基礎固めを図ることができた。 (3)資料収集を行い、事実関係の整理、目録の作成といった、今後の分析の効率化につながる基礎作業を進めた。研究書では、政治、外交、経済に関する日本史、中国史、西洋史の最新の研究動向にも目を配り、日清戦争後の利権獲得競争に関係する文献を入手した。その過程で、忘れ去られた古い研究書を発掘し、再評価する重要性を認識させられ、過去の研究者が残した史料調査も行った。 史料は、外務省外交史料館で「外務省記録」を、国立国会図書館憲政資料室で政治家の私文書、経済雑誌資料などを収集した。調査を予定していた台湾総督府文書は、インターネット上での公開が進んだため、日本からのアクセスで閲覧を行った。また、イギリス国立公文書館でも資料収集を行い、とくに、義和団事件後に日本が行った、対清通商航海条約改正問題に関する資料を本年度中に先に収集できたことは、大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
台湾総督府文書からは、本研究に関する史料を予想以上に期待できないことが判明したが、イギリス国立公文書館で次年度以降に予定していた資料収集を先に進められたことは、大きな成果であった。また、単著刊行によって研究成果発信の役割を果たしたいっぽうで、史料に対する本格的な分析に遅れが生じた。しかしこの点については、事実関係の整理、目録の作成といった、分析の効率化につながる基礎作業を進められた点を評価したい。とくに、学会での報告や研究書の収集によって、同時代的観点に基づく課題設定の重要性や下関条約内容の仕組みを理解する重要性を再確認できたことは、こうした作業の進展を促した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、下関条約がもたらした経済条件の転換を評価し、収集した史料の分析を進めていく。主に、門戸開放通牒や英独協商に参加した日本の外交姿勢の特徴を明らかにしていき、義和団事件後の日本の対清通商航海条約改正問題につなげていく。これにより、貿易と投資の双方の利益が絡み合う、19世紀末から20世紀にかけての利権獲得競争期における複雑な様相の構造的把握や、日清戦争後の日本外交の特徴を明確にするよう努める。このことを進めるにあたり、本年度は国際学会での発表やアメリカでの資料調査を予定している。
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