2017 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報利用による根機能を制御する有用遺伝子の単離と分子育種
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16J08722
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
矢野 憲司 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 特別研究員(SPD) (30791040)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノムワイド関連解析 / 遺伝子単離 / イネ根系形質 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本育種学会において口頭発表により次のような内容で報告を行った。ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行う際、集団構造に起因した偽陽性や偽陰性を抑えるため、GWASに使用する集団の構成や解析モデルを工夫する必要がある。しかしながら、集団サイズが小さい場合や原因多型が極めてマイナーアリルである場合、解析モデルを工夫しても検出力の低下は免れない場合がある。特に作物におけるGWASの場合、集団構造と形質の特徴パターンが互いに関連していることがあり、検出力の低下はとりわけ深刻である。そこで今回、2つの独立なイネ集団を用意し、GWASの反復試験を行うことで、GWASで検出されたシグナルの検証を試みた。その結果、反復試験によるGWASシグナルの検証は、信頼できるシグナルを検出するために有効であることが明らかとなった。 上記の通り、GWASで信頼できるシグナルを検出可能であることが確認できたため、有用遺伝子の単離を目指し、根系形質に関するGWASを行った。一昨年度までに、根茎を迅速に数値化する画像解析技術を確立し、根の長さや数などの複数の形質データを取得することに成功している。そこで本年度は、得られた形質データを用いてGWASを行い、有力な候補遺伝子を同定した。さらに、候補遺伝子について形質転換体を作成し、候補遺伝子の根系に対する効果の検証を行った。1つの候補遺伝子についてCrispr-cas技術によりノックアウト系統を作成した所、コントロール系統に比べ、長い根が観察された。この結果から、今回注目した遺伝子は、根系形質を制御する有力な候補遺伝子であると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、本年度は、GWASで反復試験を行うことの重要性を明らかにし、学会にて報告を行った。今後、報告した手法を用いることで、根系形質に関わる信頼性の高い有力なGWASシグナルを検出できると想定される。 さらに、これまでの解析で選抜された候補遺伝子について、本年度は、形質転換体による機能の検証を行った。その結果、予測通り根の長さに違いが見られた。当初の計画では、候補遺伝子を予測するところまでが今年度までの計画だったため、すでに当初の計画以上の結果が得られている。現在は、他の候補遺伝子に関しても、機能を検証するための形質転換実験を行っている。 以上の理由により、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、前年に引き続き計測を行い、複数年の根系データ を取得する。これらを用いてGWASを行い候補領域の再現性を確認する。信頼性の高いGWASシグナルが確認されれば、変異ブラウザにより候補遺伝子を予測する。候補遺伝子についてDNA多型がもたらす機能的効果を確認するため、候補遺伝子全塩基配列をクローニングし、クローニングした遺伝子とは異なる配列を持つ品種に形質転換し、表現型に違いが生じるかを確認する。さらに、アミノ酸置換をもたらす変異の場合は、大腸菌または試験管内でタンパク質を合成させ、生化学的手法により機能の相違を検証する。 また、前年までに特定した候補遺伝子もしくは候補領域と各種元素含量データを用いて相互間に有意な相関関係が存在するを統計的手法により解析し、元素吸収機構のネットワーク構築を試みる。
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Research Products
(4 results)