2016 Fiscal Year Annual Research Report
ラミニン活性ペプチドを用いたES/iPS細胞培養基材の開発
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16J08861
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
熊井 準 東京薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | laminin / integrin / biomaterial / iPS/ES細胞 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプチド-ポリイオンコンプレックスマトリックス(ペプチド-PCM)の開発 組織工学に応用可能な基底膜機能を模倣した新規バイオマテリアルを創製することを目的にポリイオンコンプレックス法を開発した。ケミカルライゲーション法を用いて,ペプチドとアルギン酸アルデヒドを結合させ、ペプチド-アルギン酸を合成し、ペプチド-アルギン酸とキトサンマトリックスでPCMを形成させることで,安定なペプチド-高分子多糖マトリックスを作製した。ペプチド-PCMはペプチド特異的に細胞表面受容体と相互作用し、細胞接着活性を示した。ペプチド-PCMは簡便に作製可能であり、組織工学に応用可能な新規のバイオマテリアルとして期待できる。Fujimori, C.‡, Kumai, J. ‡, et al., Biopolymer, 108: e22983., 2017.) ヒトラミニンα5鎖Gドメインの活性部位の同定 ヒトラミニンα5鎖Gドメインの生物活性部位の同定を目的に、活性ペプチドの探索を行った結果、18種類の生物活性配列を同定した。ラミニンLG3モジュール部分に存在するhA5G66dを固定化したキトサンマトリックスは、インテグリンα3β1およびインテグリンα6β1と相互作用することがわかり、ラミニン-511およびラミニン-511E8フラグメントのインテグリンを介した細胞との相互作用に,重要な役割を担っている可能性が示された。また、ペプチドの評価方法によりペプチドが及ぼす生物活性に違いがあることがわかった。これらのペプチドは多様な機能を有するラミニンの分子メカニズムを解明する上で,有用なツールとなることが期待される。また、hA5G66d-キトサンマトリックスは、インテグリンα3β1およびインテグリンα6β1を介して細胞と相互作用していることから、ヒトES/iPS細胞の培養基材としての応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は平成28年度よりDC2に採用され、平成28年度が採用一年目の年にあたる。本年度は、国内外の学会を含み計5回の発表を行い、日本ペプチド学会からJPS Travel Awardを受賞した。また、本年1月にアメリカNIHにて45分間のセミナーを行い、堂々とセミナーを行ってきた。さらに、Toyaku News Letter及びPeptide Newsletterの執筆も行った。平成28年度4月に来日した中国人研究員と英語でディスカッションするなどグローバルな研究者を目指し努力したと考えている。 研究面に関しては、新たなバイオマテリアルを開発し、それを論文投稿に至る成果を出した。このバイオマテリアルの開発は、ペプチド特異的に細胞表面受容体と相互作用し細胞接着活性を示すこと、簡便に作成可能であることから、組織工学に応用可能な新規バイオマテリアルとして期待できる。この成果は、今後の研究課題の遂行に期待できるだけでなく、初代培養など様々な培養研究に有用であると考えられる。また、ヒトラミニンα5鎖Gドメインの生物活性部位の同定を目的に、18種類の生物活性配列を同定した。ラミニンLG3モジュール部分に存在するhA5G66d(NLGSVNVS)を固定化したキトサンマトリックスは、hA5G66d-キトサンマトリックスは、インテグリンα3β1およびインテグリンα6β1を介して細胞と相互作用していることから、ヒトES/iPS細胞の培養基材としての応用が期待できること、多様な機能を有するラミニンの分子メカニズムを解明する上で,有用なツールとなることが期待できる。こちらは現在論文準備中でありすぐに投稿予定である。 以上のように1報の論文を報告し、1年目に予定されていた研究目標を終え現在論文を執筆している点から考え、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
〈混合ペプチド-高分子多糖マトリックスの作製とiPS/ES細胞培養基質の有用性の評価、新規バイオマテリアルの作製〉 前年度の実験により同定された異なる受容体に作用する細胞接着ペプチドを複数種類組み合わせて高分子多糖に固定化し、細胞に対する作用の違いを解析し、ペプチドの種類や量、混合比などの最適化を行う。具体的には、異なる受容体に作用する2から5種類のペプチドを高分子多糖と接合させる。高分子多糖としてキトサンを使用し、線維芽細胞の細胞接着、伸展を数値的に評価し、細胞骨格形成を観察することで最適な混合ペプチド-高分子多糖マトリックス(人工基底膜)の調整条件(ペプチドの種類と濃度、高分子多糖の種類)を明らかにし、iPS/ES細胞の維持培養に有用であるかを検討する。指標としてラミニン511E8フラグメントやマトリゲルを用いて、ヒトラミニンα5鎖由来混合ペプチド-高分子多糖マトリックスのiPS/ES細胞培養基質としての有用性を評価する。iPS/ES細胞の細胞接着活性評価、受容体の特定を行い、OCT4やSOX2などの未分化マーカーをFACS、免疫染色、ウェスタンブロットなどで解析することで未分化維持を評価し、人工基底膜としての有用性を実証する。 また、ペプチドPCMにおいて報告した、ライゲーション法を用いたペプチド-高分子多糖マトリックスを応用し、低融点アガロースを用いた新規バイオマテリアルの開発を目指す。方法としては、低融点アガロースにある末端のジオールを開裂させアルデヒドを作成したのち、そこにライゲーション反応によりペプチドを付加させる。現在、ペプチド-アガロースは作成済みでありヒト皮膚線維芽細胞の接着活性は確認済みである。今後、EDTA、ヘパリン、抗インテグリン抗体などを用いた細胞接着阻害実験や蛍光免疫染色などを行う。そして、これらの成果を国内外の学会において報告する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Identification of laminin α5 short arm peptides active for endothelial cell attachment and tube formation.2017
Author(s)
Kikkawa, Y., Sugawara, Y., Harashima, N., Fujii, S., Ikari, K., Kumai, J., Katagiri, F., Hozumi, K., and Nomizu, M.
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Journal Title
Journal of Peptide Science
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Biological activity of peptide-conjugated polyion complex matrices consisting of alginate and chitosan.2017
Author(s)
Fujimori, C‡., Kumai, J‡., Nakamura, K., Gu, Y., Hozumi, K., Katagiri, F., Kikkawa, Y., and Nomizu, M
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Journal Title
Biopolymers
Volume: 108
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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