2016 Fiscal Year Annual Research Report
コーパスを利用した近現代漢語の表記・語法の多様性に関する計量的・通時的研究
Project/Area Number |
16J08872
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
間淵 洋子 明治大学, 国際日本学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | コーパス / 漢語 / 近代語 / 計量言語学 / 表記 / 語法 / 多様性 / 言語変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近代日本語の特徴とされる漢語の多様性に着目し,大規模言語データベース(コーパス)の網羅的調査分析に基づいて,近代(明治・大正)と現代(平成)における漢語の使用実態とその変化について計量的・実証的に分析を行い,言語変化のメカニズムを解明しようとするものである. 28年度は,実態調査に用いるためのコーパスの整備を重点的に行った.国立国語研究所の共同研究員として,①近代雑誌の大規模コーパス,②国定国語教科書のコーパスの構築と,これらの利用についての研究を進めた.また,資料やメディアによる言語使用差を把握するために,独自に近代の③新聞と文芸作品のコーパスを設計し,新聞本文の文字入力・校正・テキストの構造化を行い,文芸作品の選定を行った.①②については成果を学会で発表した. また,研究手法の確立を目指し,①コーパスを用いた漢語の網羅的抽出,②分析対象の決定,③表記多様性(同じ語における多様な表記形式.例:「記念」に対する「記念」と「紀念」)の整理・分析,④用法多様性(同じ語における多様な用法.例:「貴重」に対する形容詞用法「貴重な」と動詞用法「貴重する」)の整理・分析について一部を実施した.③については,近代から現代にかけて,漢語の表記バリエーションが統一化する傾向にある実態を明らかにした論文が学会誌に掲載されたほか,漢語でありながら,平仮名や片仮名で表記される傾向の強い語の実態とその背景を分析し,学会発表を行った. 上記の多様性やその変化の実態把握と並行して,言語変化の要因分析のために,社会背景(時代背景,国語施策等)の調査を開始し,一部を成果発表に利用したほか,分析対象語自体の属性(漢語の出自,語構成,定着の様相)を要因分析に用いることを視野に,分類の枠組みを検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コーパスの構築および研究手法の確立については,試行を順調に進め,概ね当初の予定通り,調査データが揃う来年度に向けて準備を進めることができた.しかし,独自に原本の準備から文字入力と校正の外注,データ整形を実施する新聞のコーパスについては,原本の特殊性(文字の小ささ,変体仮名の多さ,印刷の不鮮明さ)から,十分な品質を保って入力を実施できる業者を選定することが困難であり,想定以上に時間を有した.そのため,若干の遅れを生じている. 研究成果の公表については,コーパス構築,漢語多様性の分析のいずれについても,査読付き論文の掲載,あるいは,査読あり研究発表の実施といった形で,着実に成果発表を行い,議論や軌道修正などの機会を多く得ることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
独自に構築している新聞コーパスについては,当初の想定以上に文字入力や校正作業が困難であり,時間を有した.よって,当初予定していた資料の単語情報付与については簡略化し,研究対象とする漢語を中心に実施することで作業の省力化と時間の短縮を図ることとする. また,文芸作品のコーパス構築にも同様に多大な時間を要することから,既存の雑誌コーパスや構築中の教科書,新聞のコーパスに含まれる文芸作品(小説等)を,文芸作品コーパスの代替として用い,資料による言語使用差の把握を実施することとする.
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Research Products
(7 results)