2017 Fiscal Year Annual Research Report
ルイス酸―塩基相互作用を利用した遠隔位選択的な炭素―水素結合変換反応の開発
Project/Area Number |
16J08903
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若木 貴行 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | C-H変換反応 / ルイス酸塩基相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、新薬創出に要求されるハードルは上がり続け、投じられる費用に対して開発成功率は減少の一途を辿っている。合成化学の立場からこの問題を解決するには、これまで展開困難であった医薬リード骨格を迅速に供給可能にする新規反応形式の開発が必要となる。中でも炭素-水素(C-H)結合のような有機分子に遍在する官能基を標的とした変換反応は、複雑化合物の短工程合成および医薬品等のlate-stage官能基化の実現に直結する考え方として、近年注目を集めている。しかし、数多くの研究がなされているにもかかわらず、達成されているC-H変換反応は配向基近傍に限られ、遠隔位選択的な反応例は少ない。本研究では、従来法では困難であった、芳香族化合物のパラ位選択的なC-H変換反応、およびピペリジンなどの脂肪族環状アミン遠隔位C(sp3)-H変換反応を、基質と配位子間でのルイス酸-塩基相互作用を利用することで達成することを目的とした。一昨年度に当初の予想に反して、配位子に組み込んだ二座配向基部位が機能しないという問題に直面し、新規でより強力な二座配向基骨格のデザインおよび合成を行った。結果、電子供与性が高い新規ピコリン酸アミド骨格の創出に成功し、パラジウム/ピコリン酸アミド触媒存在下、アルデヒドとハロゲン化アリールからケトンが生成することを見出した。昨年度はさらにピコリン酸アミド骨格をチューニングすることで、従来法では合成が困難なヘテロアリールケトンやビスヘテロアリールケトンの合成にも成功している。本研究では、計算化学を用いた反応機構解析なども行い、2018年3月にACS Catal.誌に掲載された (ACS Catal, 2018, 8, 3123.)。本年度以降、ルイス酸塩基相互作用部位に焦点を当て、目的である遠隔位選択的なC-H結合変換反応に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究計画としては、次のようなものを考えていた。 「一昨年度に開発した新規ピコリン酸アミド骨格をリガンドに組み込むことで、当初の目的である遠隔位選択的なC-H変換反応の開発に取り組む」
しかし、一昨年度に見出したパラジウム/ピコリン酸アミド触媒を用いた新規ケトン合成法の開発において、ヘテロアリールケトンやビスヘテロアリールケトンが低収率ながら得られることが分かった。これらの化合物は医薬品などの機能性有機化合物に広く見られる有用な骨格である一方で、その合成には多段階を要していた。そこで私はピコリン酸アミド部位をさらにチューニングすることで収率の向上に取り組むこととした。その結果、ピリジン環平面上に窒素原子が2つ固定された電子供与性が非常に高いピコリン酸アミドを用いた際に、これらの化合物の効率合成に成功した。また、本パラジウム/ピコリン酸アミド触媒系は興味深い反応性を有していたので、計算化学も用いて反応機構の解析を行った。その結果、アルデヒドのC-H結合が活性化されていることを見出し、この触媒系の更なる発展を示唆する結果を得ることに成功した。本研究成果は、ACS Catal.誌に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画からはだいぶ離れてしまったが、これまでに得られた配向基部位の性質の知見を活かし、本年度は基質と配位子間のルイス酸塩基相互作用部位の構築に力を入れて当初の目的であるルイス酸塩基相互作用を用いた遠隔位選択的なC-H変換反応を達成する予定である。
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