2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J08924
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 友章 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 光磁化制御 / スピン / メモリ / テラヘルツ / ポンププローブ / 強磁性半導体 / 磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性体磁化をピコ秒オーダーで超高速に反転させることを目的に研究を行った。当該年度は、実験で用いた強磁性半導体GaMnAsの基礎的な物性である電子構造の評価を行い、その上で超高速光磁化制御とその原理解明に取り組んだ。GaMnAsは半導体と非常に整合性が良く将来のスピントロニクス材料として注目されているため、これを用いて研究を行った。ピコ秒レーザーを用いた光ポンププローブ測定により、初めて光学的にフェルミレベル付近の電子構造を明らかにすることに成功した。電子と磁性の間には相関があるため、電子構造の変調によって磁性を変調する際にこれは必須となる知見である。この知見を踏まえて次に超高速磁化制御の研究を開始した。実験ではテラヘルツパルス光をGaMnAsに照射することにより、ピコ秒スケールで光の電磁場による刺激を試料に与えた。この実験ではテラヘルツパルス光に磁化を追従させることによってコヒーレント磁化制御の観測に挑戦した。その結果、強磁性半導体で初めて磁化のテラヘルツ応答を観測することに成功した。さらに、従来磁化のテラヘルツ応答の起源としては一般的にテラヘルツ光の磁界成分が考えられてきたが、詳細な測定の結果、テラヘルツ光の電界成分が非常に重要な役割を果たしていることが初めて明らかになった。これは電界によって電子構造を変調することが、超高速磁化制御技術の確立において極めて重要であることを意味している。従って、電界効果に着目した材料選択が重要であると考えられる。このように当該年度は研究課題の達成のために非常に重要な超高速磁化制御に関して基礎的な物理が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況について、ピコ秒レーザーを用いた光ポンププローブ測定により、初めて光学的にフェルミレベル付近の電子構造を明らかにすることに成功した。これは高速のメモリ動作において非常に重要な知見である。 一方、テラヘルツパルス光を用いて、ピコ秒超短パルス光をGaMnAsに照射し、テラヘルツパルス光に磁化を追従させることによるコヒーレント磁化制御の実験を開始した。その結果、強磁性半導体で初めて磁化のテラヘルツ応答を観測することに成功した。本研究での詳細な測定から、テラヘルツパルス光の電界成分が超高速磁化変調において重要な役割を果たしていることが初めて明らかになり、電界効果に着目した材料選択が重要であることが分かった。このように研究課題の達成のために非常に重要な超高速磁化制御に関して基礎的な物理が明らかになっており、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り超高速磁化反転の達成を目標として研究に取り組む。これまでの研究から電界による電子構造の変調を効率的に行うことができれば磁化を大きく変調できると推測される。従って、電界効果が大きくするために、キャリア濃度の小さい磁性体である強磁性半導体材料系において、適切な材料を探索する計画である。また、電界強度によって磁化変調量がどのようにスケールするか解明すれば超高速磁化反転に大きく近づくことができると考えている。これらの取り組みにより磁化反転を達成し、その上で研究計画の通り、微細メモリに応用可能な材料での磁化反転、光磁化反転の電気検出、微細メモリへのナノスケールでのアクセスに挑戦する計画である。
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Research Products
(4 results)