2016 Fiscal Year Annual Research Report
新概念「有機分子触媒によるσ結合活性化」に基づいた分子変換手法の開発
Project/Area Number |
16J08932
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
守政 陽平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / ジホウ素化 / シリルホウ素化 / ラジカル反応 / 結合活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機分子触媒による無極性σ結合の活性化と、これに基づく特徴ある分子変換反応の創出を目的として研究を行っている。平成28年度は、交付申請書研究実施計画に記載した、研究項目①「4,4’-ビピリジン触媒の高性能化」を実施した。多置換ピラジンのジホウ素化における、4,4’-ビピリジン骨格およびピリジン骨格を有する有機分子の触媒効率を検討した。平面性を付与したビピリジンは触媒効率が低く、中間体構造が安定になりすぎるのは有効ではないことが示唆された。一方、シアノ基やピリミジル基を4位に有するピリジンでは高い触媒効率が達成でき、電子求引性置換基が置換した構造や多窒素含有芳香環構造が効果的であることを見出した。また、触媒反応の中間生成物の構造について、理論計算および分光学的手法による検討を行った。その結果、4,4’-ビピリジンによりジボロンのホウ素-ホウ素σ結合の均等開裂が進行し、ラジカル種が生成することを明らかとした。以上の知見から、ラジカル種の安定性と反応性の均衡をとる触媒構造が効果的であると考察できる。 上記の知見を基に、有機触媒により活性化可能な含ホウ素σ結合について検討を進めた結果、ピリジン誘導体によりシリルボランのケイ素-ホウ素結合が触媒的に活性化できることを見出し、これを鍵とするアルキンの触媒的シリルホウ素化を明らかとした。以上の成果は、従来遷移金属で行われてきた結合活性化を有機分子で実現するための有益な基盤的知見であり、有機分子触媒を用いる分子変換の更なる発展に資すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機分子触媒の構造と触媒効率の相関についての知見が順調に蓄積つつあるため。 この知見に基づいて、有機分子によるホウ素-ケイ素結合の活性化と炭素-炭素三重結合への触媒的付加へ展開できたことは特筆すべき成果であり、今後の研究展開に資すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
有機分子触媒により活性化可能な含ホウ素σ結合の拡張を図る。具体的にはホウ素-ホウ素結合やホウ素-ケイ素結合に加え、ホウ素-炭素結合の活性化も念頭に検討を進める。 また、炭素-炭素二重結合への有機触媒シリルホウ素化の開発に取り組むとともに、ラジカル反応の特徴を生かした多成分連結反応への展開を目指す。
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