2016 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋幹細胞の未分化維持における分子機構の解明および新規培養法の確立
Project/Area Number |
16J08994
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石井 佳菜 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | 骨格筋幹細胞 / 筋サテライト細胞 / ラミニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、骨格筋幹細胞の未分化維持機構における分子機序の解明及び新規培養法の確立を目指し、マウス及びヒト骨格筋組織及びフローサイトメーターにより分離した骨格筋幹細胞を用いた研究を遂行している。平成28年度は、骨格筋幹細胞に発現が確認されている細胞膜貫通タンパク質であるTeneurin-4(Ishii et al., 2015, Stem Cells)と基底膜との相互作用の解析を目標とした。基底膜の構成タンパク質は、ラミニン、コラーゲン、パールカン、ニドゲンであるが、これらのうち細胞との相互作用に寄与しているのは、前者の3種類(ラミニン、コラーゲン、パールカン)である。まず、骨格筋幹細胞の細胞外マトッリクスを構成するタンパク質を解析するために、マウス及びヒト骨格筋組織を組織免疫化学染色により解析した。組織免疫化学染色の結果から、ラミニンのアイソフォームであるラミニンα3、α4、α5が骨格筋幹細胞の細胞外マトリックスを構成するタンパク質であることを同定をした。さらに、これらの結果を元にして生体内での環境を、リコンビナントに精製されたタンパク質(ラミニンE8フラグメント)を用いてin vitroにて再現することにより、骨格筋幹細胞の未分化性を維持させたままの培養を可能にした。さらに、ラミニンE8フラグメントを用いて培養した骨格筋幹細胞は、移植時に筋繊維へと分化する効率が高く、移植効率の改善が見られた。以上の研究は、骨格筋幹細胞の分子メカニズムの解析など基礎的研究に用いられるだけでなく、再生医療に向けた細胞移植治療にも用いられることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、骨格筋幹細胞の未分化維持機構における分子機序の解明及び新規培養法の確立を目指し、マウス及びヒト骨格筋組織及びフローサイトメーターにより分離した骨格筋幹細胞を用いた研究を遂行している。骨格筋組織における組織免疫化学染色の結果から、基底膜タンパク質であるラミニンα3、α4、α5が骨格筋幹細胞周囲に発現していることを解明した。さらに、これらの結果を元にして生体内での環境を、リコンビナントに精製されたタンパク質(ラミニンE8フラグメント)を用いてin vitroにて再現することにより、骨格筋幹細胞の未分化性を維持させたままの培養を可能にした。以上より、本研究の目標である骨格筋幹細胞の未分化維持機構における分子機序の解明及び新規培養法の確立においては、細胞外マトリックスに注目することによって新たな知見の獲得および新規培養法の確立に成功した。今後、ラミニンやインテグリン、Teneurin-4に注目した骨格筋幹細胞の未分化性維持に関する分子メカニズムの解析を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
骨格筋幹細胞における未分化性維持に関する分子メカニズムの解明のために、細胞外マトリックスに注目した発現解析を行う。さらに、骨格筋幹細胞においてインテグリン阻害剤やTeneurin-4の下流分子として同定されている分子の阻害あるいは活性化を行うことでシグナル経路を解明する。
|