2016 Fiscal Year Annual Research Report
潤滑下におけるDLCの超低摩擦発現メカニズム解明のためのその場複合解析装置の開発
Project/Area Number |
16J09043
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大久保 光 東京理科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ダイヤモンドライカカーボン / DLC / 超低摩擦現象 / その場観察 / トライボロジー / 摩耗 / 摩擦 / 新規材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、私は「潤滑下におけるダイヤモンドライカカーボン(DLC)膜の極低摩擦メカニズムの解明」のために、摺動界面を摩擦中に分析可能なその場Raman分光摩擦試験機を作成した。この装置により従来自動車業界で大きな課題となっていたDLCと特定の潤滑剤を用いた際に発現する「異常摩耗現象」の原因を解明した。自作装置によるDLC膜構造変化と添加剤由来反応膜の生成過程の同時測定をにより,MoDTCがDLC膜の特異的な構造変化を誘発しており.硬質なカーバイド粒子を生成する際の化学的な摩耗・硬質粒子が摺動面に介在することによる機械的な摩耗の二つの因子により異常な摩耗が引き起こされていることを明らかとした.これにより,潤滑油添加剤とDLC膜固有のトライボケミカル反応を同定し,潤滑油添加剤がDLC構造に影響を及ぼす可能性を示した。 上記ような従来使用されている重金属添加剤では,DLCの油中極低摩擦を発現するには異常摩耗が問題点となること,加えて,近年の環境問題を背景として,重金属添加剤の代替添加剤が求められていることから,C,O,H,Nといった元素構成からなるDLC膜用の添加剤創生を試みた.我々は、DLCと同じカーボン素材で相性が良いと思われたカーボンナノチューブ,フラーレン,グラフェンといったナノカーボン材料にオレイン酸などの脂肪酸を官能基修飾することで,潤滑油添加剤としての利用を試みた.本年度はオレイン酸修飾グラフェンプレートを創製し,トライボロジー特性の確認をおこなった.その結果,DLC膜と鉄鋼材との摺動に際して,オレイン酸修飾グラフェンを添加した潤滑油では単にオレイン酸を添加した場合と比較して低摩擦を示すことが示唆された. 上記した極低摩擦発現メカニズム解明のための装置作成・その有効性の実証と関連する諸現象の解明ならびに新規添加剤創生による新たな潤滑システムの提案を昨年度の成果とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度では装置開発の試行錯誤に時間を費やす予定であったが、当初の予定よりも装置開発が滞りなく進んだことから、作成装置の本テーマにおける実用性・有効性の確認作業に早い段階で移行できた、加えて、われわれが想定していなかった特異的な現象を捉えることができたことから、早い段階で論文や国際学会などで発表することが叶った。これにより、現在までの関連テーマにおける査読付き論文は10報におよび、本年度だけでも3報受理された。また装置開発の成功により、二年時以降に取り組む予定であった「新規添加剤創生による新たな潤滑システムの提案」にも着手でき、一定の成果が出たことも昨年度の成果が当初の想定以上であったことを裏付けている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は,本研究過程で,DLC膜の極低摩擦を得るためには吸着膜・反応膜関係なしに,非常に高い粘性を有した薄膜をDLC膜上に形成できれば,極低摩擦が発現することを実験データより示唆した.そこで,我々は来年度以降は上記設計指針に基づいた潤滑システム構築を試みる。 主な取り組み内容として、「ナノカーボン材料の潤滑油添加剤利用」、「ポリマーブラシ(CPB)とDLCによる極低摩擦表面の創製」上記二つの切り口から新たな極低摩擦システムの構築を行い、初年度作成したその場摩擦試験機によりその潤滑メカニズムの考察を行う。 まず、近年の環境問題を背景として,重金属添加剤の代替添加剤が求められていることから,C,O,H,Nといった元素構成からなるカーボンナノチューブ,フラーレン,グラフェンといったナノカーボン材料によりDLC膜用の添加剤創生を試みる.また、新たな試みとしてCPBを利用する。CPBは材料表面に密にグラフトされた高分子鎖が,分子鎖間の立体障害を避けるべく表面から垂直方向に延伸された構造を有しており,その特異な構造によって優れたトライボロジ特性を示すことが明らかになってきている.これをDLC膜の相手材料に付与することで,疑似的に吸着膜のような境界膜を摺動面に形成させることで,極低摩擦を実現できるものと考えている. 上記取り組みにより、DLCを用いた極低摩擦システムの提案を行う。
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Research Products
(8 results)