2016 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙重力波検出器のための高出力・広帯域周波数安定化光源の開発
Project/Area Number |
16J09106
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
末正 有 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 周波数安定化 / 強度安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙型重力波検出器DECIGOに用いるレーザー光源のbreadboard model(BBM)を開発し、周波数と強度の安定化を行った。 昨年度以前にBBMを開発し周波数安定度の相対評価(誤差信号評価)を行ったが、光源の周波数安定度の絶対評価・更なる性能の向上のためにBBMを新たにもう一台作製した。このBBM(新BBM)は昨年度以前に自作した旧BBMとほぼ同様の光学設計であるが、今年度はさらに従来よりも光学系の機械的安定度を向上させるために光学系を複数同時に固定出来るアルミ製光学マウントを新たに作製・導入し、機械的安定度の向上を図った。また、レーザーのビームを広げるためのビームエキスパンダーを導入することによって取得する信号の空間飛行広がりを抑圧し、更に光源の周波数安定度を向上させた。また、以前作製した旧BBMも新BBMと同様の仕様へと変更し新BBMと同等の性能を持つ光学系へとリニューアルした。この2つのBBMはそれぞれ取得した信号を周波数基準として周波数安定化制御を行い、両方とも誤差信号評価で周波数安定度df<1Hz/√Hz(DECIGOの重力波検出帯域1Hzにおける値)を達成した。この値は誤差信号評価での目標値を満たしている。また、これらの光源の周波数のビート測定から周波数安定度の絶対評価も実施した。周波数安定度はアラン分散で評価を行い、積算時間1秒,1000秒共に相対周波数安定度df/f=10^(-11)台を達成した。 DECIGO観測帯域における光源の強度雑音はファイバー増幅器の励起用光源を制御することにより抑圧した。実験装置の防振系・制御系の見直し・刷新を行い、強度安定度をdI/I=5x10^(-8)/√Hzまで向上させた。また信号取得のための変調周波数帯域(200kHz)においても強度安定化を行い、dI/I=2x10^(-7)/√Hzの値を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年頭に本研究の周波数安定化実験で用いられている分光用ガラスセルの内の1つが破損し、特注品であったため海外からの手配に時間がかかり新BBMの開発と周波数安定度の絶対評価の実施が遅れてしまった。セルの手配後は予定通りBBMの開発を進め周波数安定度の評価を行うことが出来たが、絶対周波数安定度を要求値まで向上させるまでには至らなかった。ガラスセルの到着を待ったため周波数安定化実験には遅れが生じたが、その間に2つの帯域(1Hz,200kHz)における強度安定化実験を進め、1Hzにおける強度安定度は要求値まであと半桁の値まで向上させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
光源の周波数安定度は短期安定度と長期安定度の2つに分け、それぞれを向上させるための改善策を実施することで短期・長期的にも安定な光源の実現を目指す。 短期安定度に関しては周波数基準信号のSN比によって安定度が制限されてしまうため、基準信号の雑音成分を減らすための差動受光法と変調帯域における強度雑音の抑圧の両方を実施し、SN比を向上させて短期安定度も向上させる。 長期安定度に関しては周波数基準信号を変調・復調した時に現れる残留強度変調(RAM)によるオフセット揺らぎの効果により安定度が悪化しているため、変調子の前に偏光子を設置する等の偏光揺らぎ対策を行うことでRAMの効果を抑圧し、長期安定度を向上させる。 これらの周波数安定度の短期・長期安定度向上の対策を行った後に、直接変調法と変調移乗法の2つの信号取得方法を組み合わせた周波数制御を実施することでさらに長期的安定度を向上させ、短期・長期共に目標値であるdf/f=10^(-15)の達成を目指す。 強度安定度は昨年度までの方策に加え、新たな除振系や電圧リファレンスの導入を行い目標値である1x10^(-8)/√Hzまで安定度を向上させる。また、実際 DECIGO計画で用いられる波長515nmでも同様に強度安定度の評価を行う。これらの研究成果は物理学会等で発表し、論文投稿を行う。 これらに加え、低雑音かつ高出力化を実現する光学系の準備を行う。
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[Presentation] 安定化レーザー光源2016
Author(s)
末正有
Organizer
DECIGO workshop
Place of Presentation
東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)
Year and Date
2016-11-05 – 2016-11-05
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