2017 Fiscal Year Annual Research Report
全シス置換シクロプロパンの一般的構築法の開発と天然物合成への発展
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16J09128
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安井 基博 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ストリゴラクトン / 相関移動触媒 / 有機触媒 / 立体選択的 / 不斉反応 / ジアステレオ選択的 / 実践的 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストリゴラクトン(SL)は植物の根から分泌され、アフリカで農業被害をもたらしているストライガなど根寄生植物の種子発芽を誘導するジテルペンである。根寄生植物のストリゴラクトン受容体の選択的アゴニストやアンタゴニストを合成することで、新規作用機序の除草剤への応用が期待できるが、分子メカニズムについては未解明の部分が多い現状である。また、一般に植物のSL分泌量は非常に微量である一方で、容易に加水分解されるエノールエーテル構造を共通骨格を有しているため、SLを人工合成することは生合成経路の解明や工業的応用に必要不可欠な課題である。これまで多数のSLの全合成及び類縁体合成が報告されているが、いずれもC2'位についてはD環部を導入する際に非立体選択的に構築している。また、C2'位を含むCD環部は生物活性に必須であることが報告されている。そこで我々はC2'位立体選択的なγ-キラルブテノリドの一般的構築法の開発を目指した。 本構造の構築例は極めて少ないため、申請者はまずエノールとブテノリドのカップリングについて、様々な反応スクリーニングを行った。種々検討の結果、キラルチオウレア4級アンモニウム塩を用いることで、既知の手法に匹敵する立体選択性でD環部導入体を得ることに成功した。また、一般にSLはABC環部に中心不斉を有するが、アキラルなストリゴラクトン類縁体に対して最適化した条件に付したところ、エナンチオ選択的に反応が進行することも見出した。 今後は更なる立体選択性の向上を様々なストリゴラクトンへの適用を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
手探りの状態から研究が始まったため、研究当初は反応そのものが進行しないといったことも多く、解決の糸口を探るために様々な反応スクリーニングを行った。種々検討の結果、ABC環部を有するエノールとγ-クロロブテノリドに対し塩基と触媒量のキラルチオウレア4級アンモニウム塩を用いることで、既知の手法に匹敵する中程度の立体選択性でD環部導入体を得ることに成功した。また、アキラルな基質を検討した結果、エナンチオ選択的に反応が進行することも見出した。このことから、本反応は強い触媒制御により立体選択性を発現させていることが示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
実践的利用法を視野に入れて選択性の向上を目指す。そこでキラルチオウレア4級アンモニウム塩の検討を続ける。計算化学的手法を用いて遷移状態を類推したところ、求電子剤がアンモニウムと相互作用していることが示唆された。今後はこの知見を活かし、アンモニウム周辺の相互作用を強固になると想定される触媒設計を行う。触媒制御による立体選択性が十分であると判断した後に、塩基・溶媒といったほかの反応条件の最適化、基質適用範囲の確認を行う。 触媒設計の目途が付き次第、並行してavenaolの短工程全合成を計画している。申請者の所属機関では独自の知見として、全シス置換シクロプロパンの新たな構築法を見出している。本反応を鍵とすることで、34工程かかったavenaolを約20短工程で全合成する計画である。本合成経路が確立した後様々な構造類縁体を合成し、プローブ化を視野に入れたavenaolの構造活性相関を行う。本研究が確立されれば、特異な構造と活性の相関や、未解明ストリゴラクトン受容体の構造および機能を解明することに貢献できると考えている。
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Research Products
(7 results)