2016 Fiscal Year Annual Research Report
エンドソーム不安定化ペプチドを用いた細胞内抗体導入法の開発と細胞機能制御
Project/Area Number |
16J09206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋柴 美沙穂 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 抗体結合ドメイン / 抗体の細胞内移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
使用する抗体量の削減を目指し、エンドソームへより多くの抗体を移行させることを目的に研究をおこなった。 第一に、ポリアルギニン融合抗体結合ペプチドの合成と評価をした。抗体へ非共有結合で結合するペプチド配列に、細胞内移行性のあるポリアルギニン(R8)を融合させたものを合成した。これと蛍光標識抗体を細胞に投与し、細胞内の蛍光量をフローサイトメトリーで測定した。結果、抗体の細胞内移行を著しく促進したことから、有効なアプローチであることが示唆された。 第二に、Tumor specific ligand 修飾抗体結合ペプチドの合成と評価をおこなった。ポリアルギニンを初めとする塩基性の高い細胞内移行性物質は、細胞種に関わらず非特異的に細胞内に移行することがドラッグデリバリーの観点からしばしば問題になる。これに対して、特定の細胞をターゲティングするためには、ガン細胞表面に高発現する分子に結合するリガンドを用いることが有効とされる。そこで、ガン細胞に高発現する葉酸受容体を標的とするため、葉酸で修飾した抗体結合性ペプチドを合成した。1と同様に細胞内への抗体の移行量を測定したところ、抗体を低濃度で投与した際に細胞内移行促進が認められた。しかしながら、効率は十分とは言えず、さらなる改変を考えている。 抗体の細胞内移行ドメインの設計と並行して、抗体の導入効率の評価を簡便に行うための評価系の開発を進めている。チューブリンは、有糸分裂に重要な分子であり、チューブリン結合分子は増殖阻害剤として抗がん剤に利用されている。エンドソーム不安定化ペプチドを用いて導入した抗体が細胞内のチューブリンと結合すれば、有糸分裂が阻害され、細胞増殖能が低下すると考えた。現在、細胞増殖試薬WST-8による細胞生存率評価や細胞周期測定等の試験法を用い、評価系の確立および条件の最適化を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エンドソーム不安定化ペプチドを用いた効率的な細胞内への抗体導入法を確立することに取り組んでいる。前年度は、抗体の細胞内移行をを促進するツールの開発と、細胞内導入抗体の活性評価法の確立に取り組んできた。前者に関しては、狙い通り抗体の細胞内移行が促進され、有効な手段とみなせる結果が得られた。さらなる機能化を図り、ガン細胞へのターゲティング能の付与を試みるなど、適用の幅を広げることにも挑戦している。今後、簡便な抗体の導入評価法が確立すれば、抗体導入法の効率を一斉に検討できるため、研究が加速すると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞に導入した抗体による細胞機能の制御に挑戦する。まず、導入する抗体を選択する。抗 Ras 抗体が、変異型RasのGTPとの結合またはエフェクター分子(RafやPI3K等)との結合を阻害するかについて、in vitro で検討する。最も結合阻害活性が高かった抗体を、合成したエンドソーム不安定化ペプチドおよび抗体取込促進キャリアを用いて、変異型 K-Ras を有する大腸ガン細胞株 DLD-1 細胞に導入する。細胞増殖試験により、異常増殖が阻害されているかを確認する。加えて、下流で活性化される MAPキナーゼのリン酸化状態をウエスタンブロット解析することでも阻害活性を確認する。これにより、本研究で開発する抗体の細胞内導入法の有効性を確認する。
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Research Products
(4 results)