2017 Fiscal Year Annual Research Report
エンドソーム不安定化ペプチドを用いた細胞内抗体導入法の開発と細胞機能制御
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16J09206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋柴 美沙穂 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 抗体の細胞内送達 / エンドソーム不安定化ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体医薬品は近年急速に開発が進んでいる。しかし、その標的は細胞外因子に限られている。これは、抗体を細胞内に導入する手法が存在しないためである。効率的に抗体を細胞内に導入することができれば、これまで抗体医薬の適用外だった細胞内分子を標的とすることが可能になると期待できる。申請者らは、クモ毒由来の膜傷害性ペプチドを改変し、エンドソーム不安定化ペプチドL17Eを開発した。L17Eはエンドソームに捕捉された分子を細胞質内に放出する活性を持ち、抗体をはじめとするタンパク質を細胞内に導入することが可能である。しかしながら、L17Eを用いた抗体の細胞内導入には、高濃度のペプチドおよび抗体が必要であり、実用には十分とは言えない。本研究は、細胞内に抗体をより効率的に導入する手法の開発を目的とした。 本年度は、前年度に合成した細胞内移行ドメイン(ポリアルギニン)を抗体結合ドメインに結合させた抗体取込促進キャリアとL17Eを併用することに取り組んだ。抗体取込促進キャリアをL17E存在下に利用すると、細胞内外で抗体が凝集する様子が観察された。ポリアルギニン以外の細胞内移行ドメインとL17Eとの組み合わせ効果に関して検討している。 これと並行して、現在エンドソーム不安定化ペプチドの活性向上のための指針を得ることを目的としたL17Eの作用機序解明に取り組んでいる。L17Eには、マクロピノサイトーシスを誘導する・負電荷脂質に選択的に作用するという類似のエンドソーム不安定化分子には見られない性質を有している。これらの性質が細胞のどの点でどのように作用し、高分子の細胞内送達を実現しているかを明らかにすることを目指した。本年度は、L17Eの作用における、時間依存性・エンドソームの成熟化および酸性化の関与・マクロピノサイトーシス機能の関与といった要因を検討し、L17Eの活性に関与する細胞機能に関する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
L17Eを細胞内移行ドメインと共に使用する際の問題点が明らかになった。これは、今後L17Eをさらに応用していくうえで重要な知見となる。一方、L17Eのエンドソーム不安定化メカニズムの解明にあたって、重要な情報が得られた。総合的に見て、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
エンドソーム不安定化ペプチドと細胞内移行ペプチドを併用する際に生じる凝集を解決するような対策を講じ、より効率的な抗体の細胞内移行を目指す。L17Eのエンドソーム不安定化活性の作用機序解明を通じてより強力なエンドソーム不安定化ペプチドをデザインするための知見を得る。
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