2016 Fiscal Year Annual Research Report
単分子スペックル法と三次元超解像顕微鏡による内耳不動毛分子動態の定量的解析
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16J09300
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三好 拓志 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 一分子イメージング / 超解像顕微鏡 / アクチン / 有毛細胞 / 感音難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
感音難聴は20%もの有病率を持つ疾患であるにも関わらず、有効な治療法が存在しない。音を検出する有毛細胞が再生しないためである.有毛細胞には不動毛という複雑なアクチン高次構造が存在しており,内耳再生を困難にしている.不動毛のアクチン高次構造は,アクチンや制御分子が構造を保ちつつ入れ替わるという動的制御を受けている.本研究の目的は,アクチンや制御分子の動的制御が,不動毛という複雑な高次構造を作り上げるメカニズムを解明することである.そのため,①不動毛のアクチン制御分子に対する単分子スペックル法による観察,②三次元新型超解像顕微鏡(3D-IRIS)による不動毛制御分子の超解像マッピングを行った. ①では,GFP標識したアクチン制御分子を培養細胞内で強制発現させ,生細胞における挙動を一分子単位で測定する.今回はアクチン伸長因子であるDIAPH1の挙動を調べた.DIAPH1は進行性感音難聴の原因遺伝子で,近年R1204Xと呼ばれる変異が報告された.我々は単分子スペックル法を用いることで,R1204X変異がDIAPH1の活性亢進をきたすことを示し,神戸大学バイオシグナル総合研修センターとの共同研究として2016年に論文発表・掲載した. ②では,木内,渡邊らが開発した超解像顕微鏡であるIRISを用いて,不動毛制御分子のマッピングを行う.IRISは結合解離の速い蛍光分子をプローブとして用いる新しい超解像顕微鏡である.本項目を成功させるには,任意の標的に対して迅速に結合解離するプローブを作製する技術が不可欠である.今回我々は,一分子イメージングを用いて標的とプローブの結合解離を直接可視化するスクリーニング法を開発し,プローブの単離・イメージングに成功した(平成27年度特許出願).今後は不動毛の構成分子に対するプローブを順次作製する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は①不動毛のアクチン制御分子に対する単分子スペックル法による観察,②三次元新型超解像顕微鏡(3D-IRIS)による不動毛制御分子の超解像マッピング,③定量的数理モデルを用いた不動毛における分子動態の解明,に取り組んでいるが,特に①②において実績をあげている. ①では,GFP標識したアクチン制御分子を培養細胞内で強制発現させ,生細胞内における挙動を一分子単位で測定する.今回は,重要なアクチン伸長因子であり,進行性感音難聴の原因遺伝子あるDIAPH1を対象とした.DIAPH1は近年,R1204Xと呼ばれる変異が日本で報告されている.この変異がアクチン重合に及ぼす影響について単分子スペックル法で調べたところ,R1204Xの活性は野生型より有意に高頻度で,完全活性型のM1190Dより低頻度であった.このことから,R1204Xは活性亢進によって進行性感音難聴を来している可能性が示唆された.本項目は,神戸大学バイオシグナル総合研修センターとの共同研究として2016年に論文発表・掲載された [Ueyama et al., EMBO Molecular Medicine, 2016]. ②では,木内,渡邊らが開発した超解像顕微鏡であるIRISを用いて,不動毛制御分子のマッピングを行う.IRISは結合解離の速い蛍光分子をプローブとして用いる新しい仕組みの超解像顕微鏡である.しかし,これまでのIRISのプローブはアクチンや微小管など標的が限られていた.今回我々は,一分子イメージングを用いて標的とプローブの結合解離を直接可視化し,任意の標的に対するプローブをスクリーニングする方法を開発した(特許申請中).実際にプローブの単離,超解像イメージングにも成功している.今後は,不動毛の構成分子に対するプローブを順次作製し,分子のマッピングを予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
我々は①不動毛のアクチン制御分子に対する単分子スペックル法による観察,②三次元新型超解像顕微鏡(3D-IRIS)による不動毛制御分子の超解像マッピング,③定量的数理モデルを用いた不動毛における分子動態の解明,に取り組んでいる. このうち①に関しては,R1204X変異DIAPH1の単分子スペックル法による解析について,Inner Ear Biology(ドイツ)で発表を予定している.R1204X以外の変異に関しても引き続き神戸大学バイオシグナル総合研修センターとの共同研究を行い,単分子スペックル法によるアクチン重合活性測定を行う.DIAPH1以外の分子についても解析を行う. ②については,我々の開発したスクリーニング方法を活用して,不動毛制御分子に対して多種多様なプローブを作製する.そして,不動毛を構成する分子のマッピングを予定している.三次元化についても京都大学神経細胞薬理学教室との共同研究として,順次進めている. 最終的に,①②で得られたデータを用いて不動毛のモデリングを行い,③を達成する.
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[Journal Article] Quantitative Analysis of Aquaporin Expression Levels during the Development and Maturation of the Inner Ear2017
Author(s)
Miyoshi, T. Yamaguchi, T. Ogita, K. Tanaka, Y. Ishibashi, K. I. Ito, H. Kobayashi, T. Nakagawa, T. Ito, J. Omori, K. Yamamoto, N.
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Journal Title
J Assoc Res Otolaryngol
Volume: 18
Pages: 247-261
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Constitutive activation of DIA1 (DIAPH1) via C-terminal truncation causes human sensorineural hearing loss.2016
Author(s)
Ueyama T, Ninoyu Y, Nishio S, Miyoshi T, Torii H, Nishimura K, Sugahara K, Sakata H, Thumkeo D, Sakagushi H, Watanabe N, Usami S, Saito N, Kitajiri S.
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Journal Title
EMBO Molecular Medicine
Volume: 8
Pages: 1310-1324
DOI
Peer Reviewed