2016 Fiscal Year Annual Research Report
演算加速器型スパコンによる実スケール防災シミュレーションのフレームワーク構築
Project/Area Number |
16J09324
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
都築 怜理 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 粘弾性体 / 多体解析 / 接触解析 / 表面形状 / 大規模計算 / 動的領域分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
演算加速器型スパコン上での実スケール防災シミュレーションを実行するために非常に有効な計算手法である多体粘弾性変形解析手法 QDEM (Quadruple Discrete Element Method) について、物体-物体間の接触判定及び接触力計算に関する改良型手法を開発した。従来の QDEM では、QDEM の物体表面に DEM 粒子を貼り付けることで近似的な接触判定と接触力計算が行われていたが、物体表面の滑らかさが表現できないなど、幾つかの問題を含んでいた。通常、ポリゴンモデルで表現された物体同士の衝突を正しく扱うためには多面体幾何学に基づく6種類の衝突パターンを導入する必要がある。しかし、すべての衝突パターンの計算を行うことは非常に高負荷となるため現実的ではない。そこで、防災アプリケーションであることに注目し、現実において頻出となる「点-面」及び「線-線」の2種類の衝突計算を試験的に導入した。高速化のために計算領域を空間格子に分割し、隣接する格子に登録された四面体要素とのみ接触判定を行う近傍探索リストを四面体要素群に応用した。また、メモリ使用量を抑えるためにセル内に登録された四面体要素同士が互いに参照するリンクリスト法を併せて用いた。この際、QDEM では構造力学計算が四面体要素ごとに実行される点に注目し、表面を構成する四面体要素のみをリストに登録することにより大幅な高速化を達成した。さらに、演算加速器型のスパコンで高効率実行を行うために、空間充填曲線(space-filling curve)を用いた動的領域分割を適用することにより、512 ノードを用いた場合にも弱スケーリングが達成できることがわかった。これにより、擦れ合いや構造物の変形が支配する実用的な多体の接触解析が実行可能になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
擦れ合いや構造物の変形が支配する実用的な多体の接触解析を、分散メモリ環境において空間充填曲線による多次元動的領域分割を用いて高効率に実行できるようになったことは予想以上の成果である。また、流体の粒子法であるSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)との連成計算コードの開発も現時点で概ね完了している。加えて、複数 GPU コンピューティングへの対応も十分に目処が立っている。以上を総合的に判断すると、第一年目の進捗状況としては当初の期待以上である。
|
Strategy for Future Research Activity |
分散メモリ環境における QDEM-SPH シミュレーションでは、各分割領域における袖(ハロー)領域内に存在するデータ(流体粒子、及び構造物を構成する節点と要素)を隣接領域にコピーするためQDEMのみの計算を行う場合よりも領域間のデータ通信量は大幅に増加する。QDEMによる構造解析に必要な(演算/通信)のコスト、及びSPH(演算/通信)のコストはそれぞれ異なるので、全体の(通信/計算)のコストが最適となる条件について検討する。また、自然災害や工業分野における実問題への適用を進め、そのためのフレームワークの機能拡充を施す。加えて、OpenMPで記述されたディレクティブをOpenACCによる記述へと変更することにより複数GPU化を実現し、実行性能の大幅な向上を試みる。
|
Research Products
(6 results)