2016 Fiscal Year Annual Research Report
新興国における金融危機と産業構造・為替制度との関係
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16J09356
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 晃彦 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2) (20825799)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 小国開放経済 / 新興国 / 金融危機 / 景気循環 / RBCモデル / 借入制約 / 恒久的技術ショック |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、以下の3つの研究を行った。 1.借入制約を含むモデルによる新興国の景気循環の研究: Bianchi (2011) の小国開放経済の借入制約のモデルを拡張し、新興国と先進国の経常収支の変動の違いの要因を検討した。結果として、各国の貿易財の消費割合の違いが担保資産価値の変動に違いをもたらし、これが借入制約を通して経常収支の変動率の多様性につながっていることが示された。本研究は、国際学術雑誌Economics Lettersに投稿した上で、修正後再提出を完了して審査中である。 2.新興国における恒久的技術ショックの要因に関する研究:本研究は、Aguiar and Gopinath (2007)が示した新興国に特有の恒久的技術ショックの要因を内生的に説明する試みである。現在、同論文にChang, Gomes, and Schorfheide (2002)らの習熟効果を導入する方向で進めており、この設定の下では一時的技術ショックが恒久的技術ショックに拡大され、データに近いモーメントの値が得られることが示された。 3.新興国における外生的ショックに関する研究:Aguiar and Gopinath (2007)が注目する恒久的技術ショック以外の外生的ショックを用いて新興国の景気循環の特徴を再現することを試みた。特に注目したのは借入制約が存在する場合である。この場合、恒久的技術ショックの効果が抑えられる一方、投資特殊ショックは消費の変動を拡大し、新興国の景気循環を一部再現できることが示された。 以上はいずれも新興国の景気循環を複数の観点から検討した研究であり、景気平準化や金融危機防止に関する政策提言につながるものと考えている。また、新興国の経済的な影響力が強まる中で、先進国の政策にとっても有益な情報を提供できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記「1」に関しては、“Trade Balance Volatility and Consumption Structures in Small Open Economies” として論文にまとめ、国際学術雑誌Economics Letters に投稿した上で、修正後再提出を完了して審査中である。また、「2」および「3」についてはモデル分析の主要部分が完了し、結果の検証および解釈を行い、論文としてまとめる作業を進めている。以上の理由から、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記「2」および「3」の研究について論文としてまとめ、並行して国内外の学会にて報告し、得られたコメントをもとに改訂を行って国際学術雑誌に投稿する予定である。また、いずれの研究に関しても、実証研究との比較やベイジアン法によるパラメータ推定の作業を追加することを検討している。
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