2017 Fiscal Year Annual Research Report
癌の根治ヘ向けた超分子制癌剤による癌幹細胞のオートファジー様細胞死誘導法の開発
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16J09364
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
西田 慶 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ポリロタキサン / メチル化β-シクロデキストリン / オートファジー細胞死 / 小胞体ストレス / 酸分解性 / コアセルベート |
Outline of Annual Research Achievements |
アポトーシスと作用機序の異なるオートファジー細胞死は、既存のアポトーシス誘導型の制癌剤では難しい癌幹細胞の根絶を達成し得る細胞死誘導法として期待される。本研究では、メチル化β-シクロデキストリン (Me-β-CD)を有する酸分解性メチル化ポリロタキサン (Me-PRX)によるオートファジー細胞死の誘導法を開発し、癌幹細胞の根絶を可能とする超分子制癌剤の確立を目指す。本年度は、オートファジー誘導のメカニズム解析を実施するとともに、マウス体内への投与方法の検討を行った。Me-PRXの細胞内における局在性を、各オルガネラを染色したHeLa細胞における蛍光修飾したMe-PRXの共局在性から評価した。その結果、リソソームおよび小胞体に強く局在化した。さらに、通常小胞体が網目状の構造を有するのに対して、Me-PRXを作用したHeLa細胞は斑点状に変化していた。汎用的な小胞体ストレスマーカーである核内転写因子CHOPの発現および核内移行を評価した結果、Me-PRXを作用した細胞ではCHOPの発現が上昇すると共に、核内への移行が認められた。この結果から考察すると、Me-PRXにより細胞内に放出されたMe-β-CDが小胞体へと集積し、小胞体ストレスを誘発したと考えられる。また、Me-PRXの温度依存的なコアセルベート滴の形成を利用した皮下投与の検討を実施した。これまでに我々は特定の分子組成を有するMe-PRXが、生体温度近傍においてコアセルベート滴を形成することを見出している。コアセルベート状のMe-PRXをBALB/cマウス背部に皮下投与したところ、in vivo imaging system測定より、Me-PRXは3日間を超えて注射部位に滞留していることを示唆する結果を示した。コアセルベートの形成により、Me-PRXの代謝速度ならびに排泄速度を低減に繋がると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アポトーシス抵抗性細胞に対しても正常細胞と同程度の殺細胞作用をもたらす、Me-PRXによるオートファジー細胞死の誘導機構を明らかにし、論文化した。これにより、オートファジー細胞死による癌幹細胞に対する殺細胞作用という仮説を確固たるものとし、超分子制癌剤をめざしたMe-PRXの研究に大きな進展をもたらした。また、Me-PRXの静脈投与ではないコアセルベート形成を利用した皮下投与というユニークな投与法を考案し、論文化を行った。今後、マウスレベルでの超分子制癌剤としての有用性を明らかにして行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の最終段階では、担癌モデルマウスを用いたin vivoにおける制癌作用を明らかにする予定である。担癌モデルマウスを作製し、Me-PRXが誘導するオートファジー細胞死による制癌作用について評価する。具体的には、MCF-7細胞を皮下移植したBALB/cヌードマウスに対し、Me-ket-PRXを静脈投与した後の腫瘍サイズ変化より抗腫瘍活性を評価する。また、癌幹細胞の生死判定として、組織学的な免疫染色法やCD44v抗体を使用したフローサイトメトリー解析により評価するとともに、オートファジーの誘導としてLC3やp62といったオートファジーのマーカータンパク質の免疫染色もあわせて実施する。さらに、転移がんモデルマウスに対する制癌作用の評価として、luciferase安定発現MCF-7細胞を用いた肺転移癌モデルマウスに対するMe-PRXの抗腫瘍作用、ならびに転移に関してIVISより評価する。以上の評価を通じて、Me-PRXの構造的特徴とオートファジー誘導作用を利用した超分子ポリロタキサン制癌剤としての有用性を実証する。
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Research Products
(13 results)