2017 Fiscal Year Annual Research Report
最先端超伝導検出器と高速変調で迫るインフレーション宇宙論の観測的解明
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16J09435
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 惇也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / 超伝導検出器 / ミリ波センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宇宙初期の謎に迫るための望遠鏡開発とそれを用いた観測を行うものである。宇宙初期に加速的膨張があったとするインフレーション理論は、現行の宇宙モデルに残された謎を解き明かすが、実験的には未だ証明されていない。その加速膨張の痕跡を、原始宇宙の残光・宇宙マイクロ波背景放射に見出そうとするのが、本研究で開発するGroundBIRD望遠鏡である。 GroundBIRD 望遠鏡は、高頻度の較正で感度を引き出すための高速回転システムを採用している。また、光の量子雑音よりもノイズを低く抑える超伝導共振器を焦点面検出器として用いる。毎分20回転もの高速回転と超伝導検出器とのコンビネーションはこれまでに前例のない試みである。 本年度は、高速回転と超伝導検出器運用の両立について研究開発を行った。まず、回転架台を完成させ、望遠鏡を高速回転させた状態で焦点面の温度を低温に保てることを確認した。また、その状態で望遠鏡に搭載した超伝導素子を読みだし、ノイズ測定を行った。 また、実際に望遠鏡を運用するに先立ち、各所の温度をモニターし続けることが必要となる。そのためにWebブラウザからアクセスできる温度計のインタフェースを作成した。また、超伝導素子を読み出すソフトウェアを刷新し、簡便に素子の試験ができるようになった。 年度の後半には2ヶ月間の海外出張を行った。デルフト工科大学およびオランダ宇宙研究所の DESHIMA プロジェクトは本研究と同種の素子を使用する分光器を開発し、2017年の秋にチリでの初観測を行った。オランダへの出張では DESHIMA を率いる Endo 氏らの指導のもとでデータ解析に携わり、超伝導検出器を運用し科学的成果を出すまでのプロセスについて知見を得た。また、この期間中にスペイン領カナリア諸島にあるテネリフェ島テイデ天文台も訪れ、データ転送のボトルネックを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回転しながらの超伝導検出器の読み出しについて研究開発が進展した。GroundBIRD 望遠鏡の最大の特徴は毎分 20 回転にも及ぶ高速回転変調であり、今年度の成果はそれを実現するための大きな布石となった。 観測地であるテイデ天文台でのネットワークの調査も進んだ。高速回転する GroundBIRD は、必然的にデータのサンプリングレートを高く保たねばならず、データ量も多くなる。そのため、回線の速度が問題となるが、現状では天文台の GroundBIRD 設置予定場所のすぐ付近の装置が転送スピードを律速していることが判明した。これを改善するために、カナリア天体物理研究所のエンジニアと相談し、高速の装置へと換装してもらう予定である。 また、すでに初観測を終えた DESHIMA グループのデータ処理について知見を得、GroundBIRD の観測開始をスムーズに行うための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
回転と読み出しとの組み合わせに成功したので、それを用いて観測に向けた望遠鏡の性能検査を行っていく。2018年の夏に、現地で観測ドームが完成する。それに合わせて望遠鏡を輸送し、観測開始に向けた準備を行う。
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Research Products
(6 results)