2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J09472
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小西 邦彦 京都大学, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 基礎研究 / 応用研究 / 政府支出 / 経済厚生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は私がこれまでに行ってきた研究(論文タイトル“Basic and Applied Research: A Welfare Analysis”)をさらに進めてきた。これまでは、公的部門の研究者が基礎研究を行うことによって民間部門の応用研究の生産性を上昇させるというモデルのもとで、経済厚生へ与える効果を理論的に分析していたが、基礎研究の成果は財の生産部門の生産性も上昇させるというモデルの修正を行い、以前よりも多くの政策的含意を得ることに成功した。さらに、日本のデータを用いて数値シミュレーションを行い、公的部門の研究への政府支出を現在の水準からさらに増やすことによって経済厚生を改善させることが可能であるという結果を得ることができた。以上のことを踏まえた上で論文の改訂を行い、現在は国際学術誌へ投稿中である。 また、論文タイトル“Population Dynamics, Longer Life Expectancy, and Child Rearing Policies in an R&D-based Growth Model with Overlapping Generations”では、研究開発活動と家計の出生選択を考慮した世代重複モデルを構築し、高齢化・人口減少と研究開発による経済成長の関係について分析を行った。この研究では、出生率が低く人口が減少する局面では持続的な経済成長が達成できない領域が存在することを示し、高齢化が進むとこの領域が拡大し、より持続的な経済成長が困難になり得ることも示した。また、育児支援策を拡充させたときの効果も分析し、適切な支援策を行えば出生率の回復による持続的な経済成長が達成できるという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたようにモデルの修正によって、以前よりも多くの政策的含意を得ることに成功している。さらに、日本のデータを用いた数値シミュレーションで公的部門の研究への政府支出を現在の水準からさらに増やすことによって経済厚生を改善させることが可能であるという結果を得ている。また、研究開発活動の議論においては高齢化や人口減少などは重要な要素であり、それらについての政策的含意を得ることに成功している。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、これまで研究を行ってきたモデルをもとに公的部門の研究者というものを大学に所属している研究者と想定し、基礎研究だけでなく教育活動も行うとする。この下で公的部門の研究への政府支出が家計の教育選択に与える影響を分析する予定である。
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