2016 Fiscal Year Annual Research Report
化学合成独立栄養細菌におけるRNA干渉酵素の生理学的意義の解明
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16J09473
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮本 龍樹 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | Toxin-antitoxin / 硝化細菌 / エンドリボヌクレアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
Toxin-Antitoxin機構は原核生物に広く保存されている増殖抑制機構であり,毒性タンパクであるToxinと抗毒性タンパクであるAntitoxinから構成される。通常AntitoxinがToxinと複合体を形成することでその毒性を抑制しているが,微生物がある種の環境ストレスに曝された際,Antitoxinの分解が起き,Toxinが細胞内で遊離,微生物の増殖が抑制される。Toxinが増殖抑制を引き起こすメカニズムは種々あるが,この中で最も多く報告されているメカニズムは細胞内RNAの切断,続くタンパク合成阻害である。このように翻訳阻害を誘起するToxin分子はRNA干渉酵素と総称され,細胞内RNAを配列特異的に切断することが知られている。 興味深いことに,遅増殖性の独立栄養細菌や病原性微生物はその染色体上に多くのRNA干渉酵素を持つと予見されている。しかしながら,現状,これら微生物が持つRNA干渉酵素の酵素学的性質,生理学的意義は未解明なままである。そこで本研究では,化学独立栄養細菌に保存されているRNA干渉酵素を対象とし,これらタンパクを取得,その酵素特性を解明することでRNA干渉酵素の生理学的意義の解明を目指す。 当該年度,申請者は化学独立栄養細菌ゲノム上に存在が予見されている複数種のRNA干渉酵素の取得を試みた。これらRNAを単離しその酵素活性を確認した所,RNA切断活性を確認することに成功した。また取得したRNA干渉酵素(Toxin)の対となるAntitoxinタンパクが,RNA干渉酵素の切断活性を抑制することを実験的に証明すること成功している。以上の結果から,これらToxin-antitoxin機構が機能遺伝子群であることが判明し,化学独立栄養細菌が本機構を用いて,環境ストレスに対応している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNA干渉酵素をコードすると推定される遺伝子を選定し,これら遺伝子断片を化学合成にて取得した。遺伝子断片を発現ベクターへとクローニングしたところ,一系を除く全ての系でプラスミドの構築に成功した。発現用宿主である大腸菌へのプラスミドの形質転換後,各RNA干渉酵素の誘導を行った。結果,全ての系で大腸菌の増殖抑制を観測出来,RNA干渉酵素が機能酵素であることが示唆された。 次にアフィニティークロマトグラフィーにより,それぞれのRNA干渉酵素の精製を行った。取得したフラクションそれぞれに関してSDS-PAGEを行なったところ,複数のRNA干渉酵素では目的分子量のサイズに十分な濃度のバンドが確認された。取得したタンパクフラクションと基質RNAとのインキュベーションを行ったところ,一系を除いてRNA切断活性の観測に成功した。そこで対となるAntitoxinタンパクも同様に取得し,RNA干渉酵素との共インキュベーションを行った。共インキュベーションにより,RNA切断活性の抑制が確認された。 超並列シーケンシング法を用いて,RNA干渉酵素の認識切断配列の推定を試みた。結果,これらRNA干渉酵素が特異的な配列を認識していることが示唆された。そこで蛍光消光現象を用いることで,これらRNA干渉酵素の認識切断配列の同定を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,未だ取得出来ていないRNA干渉酵素の取得を引き続き試みるとともに,これら酵素がどのような環境ストレス下で活性化するのかを検討することで,本化学合成独立栄養細菌が持つRNA干渉酵素の生理学的意義の解明を試みる。 プラスミドを構築に失敗したRNA干渉酵素はそのコーディングシーケンス中にポイントミューテーションが挿入されており,アミノ酸配列がWTのものと一残基異なるものになってしまっていた。今後,変異導入法を用いて,WTのアミノ酸配列を持つRNA干渉酵素の取得を試みる。 切断活性が確認できなかったRNA干渉酵素に関しては,本RNA干渉酵素が長鎖認識であり,使用した基質RNA中にRNA干渉酵素の認識切断配列が含まれなかったものと考えている。今後,基質RNAのバリエーションを増やすため,大腸菌から抽出したTotal RNAを利用し,ゲノムスケールで解析を行う予定である。
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