2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ原子ラジカル発生を鍵とした光触媒による官能基導入法の開発
Project/Area Number |
16J09589
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮澤 和己 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | 窒素中心ラジカル / 酸素中心ラジカル / アミノヒドロキシ化反応 / アロイルオキシ化反応 / ピリジニウム試薬 / フォトレドックス触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究者はフォトレドックス触媒と呼ばれる分子性の光触媒を用いて、一電子酸化還元反応に基づくラジカル反応の開発を行っている。特にこれまでに新規なアミノピリジニウム試薬を設計、開発することで、効率的な窒素中心ラジカル発生を鍵としたオレフィン類のアミノヒドロキシ化反応を報告している。本年度はピリジニウム骨格を有するヘテロ原子ラジカル発生法を発展として、①ルイス酸触媒と組み合わせた窒素中心ラジカル種の発生及び②酸素中心ラジカルの一種であるアロイルオキシラジカル発生を鍵とした芳香族化合物の直接的な酸素原子導入法を見出した。 ルイス酸触媒とフォトレドックス触媒を組み合わせた反応系では、様々な保護基を有する窒素中心ラジカルの発生が可能になり、対応するアミノアルコール骨格の構築法を見出した。以前までに見出した手法ではトシル保護基を有する試薬に限られており、生成物からトシル基を脱保護するのは難しいという問題があった。そこで、ブレンステッド酸により活性化されたアミノピリジニウム試薬の前駆体であるイミノピリジニウム イリド試薬に着目し、ルイス酸による活性化を検討した。その結果、スカンジウムトリフラートを用いると効率よく反応が進行しかつ以前の反応と同様の基質適用範囲を示すことが分かった。さらに、トリフルオロアセチル基やBoc基は適切な酸・塩基性条件下で容易に脱保護が可能になり、第一級アミンを有するアミノアルコールの合成が可能になった。 更に、ピリジニウム骨格が窒素中心ラジカル種の発生に効果的であるという結果から、酸素中心ラジカル種の発生とその反応の開発へと展開した。実際に様々な酸素中心ラジカル種の発生が可能であることが判明したと同時に、芳香環を有するカルボキシラジカル(アロイルオキシラジカル)が芳香族化合物に直接付加する反応(アロイルオキシ化反応)を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はヘテロ原子ラジカル種の発生とその官能基化法として、新しい窒素中心ラジカル種の発生法及び、酸素中心ラジカル種を用いた芳香族化合物の直接的な官能基化反応の2つ新たな知見が得られたので、大いに研究が進捗したと考えられる。窒素中心ラジカル種の発生法では、ルイス酸触媒とフォトレドックス触媒を組み合わせることで窒素中心ラジカル種が発生し、オレフィン類への付加反応が進行することを見出した。本結果は、新しいラジカル種の発生法になるだけでなく、ルイス酸が窒素中心ラジカル上に配位していると考えられるため、ルイス酸による反応性の制御ができる可能性がある。 また、ヘテロ原子ラジカル種として酸素中心ラジカル種の発生とその反応も見出した。本研究者が見出したピリジニウム骨格を中心とした試薬開発は窒素中心ラジカル種の発生だけでなく、酸素中心ラジカル種の発生にも適用可能であることも見出した。本手法はピリジン N-オキシド類から合成しているため、酸素中心ラジカル上の官能基を容易に変えることが可能であり、反応性を調査するのも簡便となる。そこで、芳香族化合物への酸素官能基導入法を目的として検討した結果、芳香族のカルボキシラジカル(アロイルオキシラジカル)が有効であり、かつ芳香環上に強い電子吸引性基を導入することで、脱炭酸及び水素引き抜き反応を抑制した直接的な酸素官能基導入法としてアロイルオキシ化反応が効率よく進行することを見出した。 ピリジニウム骨格を有する試薬は窒素中心ラジカル種の新たな制御法及び、酸素中心ラジカル種の発生にも効果的である知見が新たに得られた一方で、他のヘテロ原子ラジカル種、例えばホウ素ラジカル種の発生とその反応への適用はできなかった。反応の有用性や反応性、可能性を考慮し、窒素及び酸素中心ラジカル種を用いた反応の応用を拡げることが望ましいと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の進捗状況に記載した通り、ホウ素などの他のヘテロ原子ラジカル種の発生とその反応に展開するのではなく、窒素及び酸素中心ラジカル種の発生とその反応に発展できる可能性が拡がったため、フォトレドックス触媒によって発生可能なその2つのヘテロ原子ラジカル種を用いた反応に注力することとした。 窒素中心ラジカル種を用いた反応では、オレフィン類に効率よく付加反応が進行することを見出している。一方で、窒素中心ラジカル種は芳香族化合物へ付加反応や水素引き抜き反応が進行することも知られている。しかし、これらの反応、特に芳香族化合物への付加反応は窒素上の官能基が限定されるために合成化学上での汎用性に問題がある。そこで、本研究で見出したルイス酸として作用する金属種を用いたラジカル発生法を用いれば、ラジカルの反応性を金属種によって制御し、様々な窒素官能基が導入可能になることが期待できる。具体的には窒素官能基及び、金属種を検討し、反応性に関する知見を得る。さらに本研究段階で、溶媒からの水素引き抜き反応が顕著に観測された反応に関しては、アルカン等の水素引き抜き反応を鍵とした直接的なアミノ基の導入法の検討を行う。 酸素中心ラジカル種は窒素中心ラジカル種よりも水素引き抜き反応が顕著であるため、アルカン類への直接的な酸素官能基導入法を検討する。光触媒による温和で化学選択的な反応を目指す。本研究で重要になることは溶媒存在下で選択的に目的分子の炭素ー水素結合を引き抜くかであり、酸素上の官能基を容易に変えられる特性を活かし、水素引き抜きの強さを調節することで目的の反応を検討する。
|
Research Products
(2 results)