2017 Fiscal Year Annual Research Report
高解像度全球予報システムによる成層圏界面上昇現象のメカニズム及び予測可能性の解明
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16J09665
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
野口 峻佑 気象庁気象研究所, 気候研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 成層圏界面上昇 / 高エネルギー粒子降り込み / 太陽活動 / 成層圏最終昇温 / 成長モード育成法 / 成層圏突然昇温 / 衛星観測 / 成層圏-対流圏結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)太陽からの高エネルギー粒子の降り込み(EPP)によって中間圏・下部熱圏領域で生成される窒素酸化物(NOx)が、成層圏界面上昇(ES)イベントに伴って下方へ輸送される効果に関して、その影響評価実験を実施した。まず、気象研究所地球システムモデルにおいて、下層大気循環場を再解析へと拘束し、上部境界として与えているNOxデータに対する感度実験を行った。結果、ESによる輸送効果と組み合わされたEPPの影響で、極域上部成層圏のオゾンが平均40%程減少することが明らかとなった。さらに、下層の拘束を外したアンサンブル感度実験も行った結果、このオゾン減少の力学場への影響が春季に顕在化し、上空の基本場構造を変化させて、成層圏最終昇温の生起タイミング・強度を変調させる可能性があることを示した。 (2)気象研究所大気大循環モデルにおいてESを忠実に再現するために、モデル上端の引き上げ作業を行った。また、上空の衛星観測データを加工し、循環場の拘束に利用できる形で整備した。 (3)成層圏において適切に成長する初期摂動を生成するように、気象研究所アンサンブル予報システムを改変した。そのうえで、1979年以降の30冬季以上にわたる長期間について摂動育成を実施した。 (4)1979年以降に生起した多数の成層圏突然昇温(SSW)を対象に、上記の摂動を用いたアンサンブル再予報実験を実施した。さらに、その際に基準とする解析値として気象庁長期再解析とその従来型観測限定同化版を用いて両者からの予報を比較することで、衛星観測のインパクト評価も行った。結果の解析により、SSW生起の10日以上前に開始した予報では、SSWの捕捉率が高くないため、その後の下方影響の予測は概ね困難であることを示した。ただし、事例によっては、衛星観測の有無によりSSWの捕捉率が変わり、地表にまで及ぶ顕著な差異が生じる場合があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に実施したデータ解析結果の論文改訂・出版に加え、多種類のモデル実験を遂行した。モデル準備状況と昨年度の成果を踏まえて(1)と(4)の研究作業を優先的に推進した結果、興味深い結果を得ることに成功した。特に(1)については、本研究課題の目標の1つを前倒して達成することができたと言える。しかしながら、結果の有意性の確認に想定以上のアンサンブル実験が必要となったため、大量の出力データの加工・保管に多くの労力が割かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、大気大循環モデルを高解像度化した実験に着手し、ES時の擾乱構造に関する研究を進めていく。それにあたり、これまで以上に大量の出力データを扱うことになるため、ストレージの構成を見直し、必要に応じて増強していく。今年度実施した実験の結果についても論文化を進めていく。
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Research Products
(18 results)