2016 Fiscal Year Annual Research Report
潜熱蓄熱材を適用した蓄熱建材の評価手法に関する研究
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16J09764
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
草間 友花 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 潜熱蓄熱材 / パッシブ蓄熱 / 太陽熱利用 / 省エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の伝統的な内装材として湿式左官工法が知られているが、本研究では、マイクロカプセル化された微細な潜熱蓄熱材を左官材料に混和させた潜熱蓄熱材(PCM)内装左官材を開発した。このPCM内装左官材は、蓄熱材の施工面積が広くすることができ、既往研究で提案されているような任意の場所、任意の厚みでの設置が可能である。 ・本研究では、PCM内装左官材を中心に、基本的熱性能試験や、実験棟での省エネルギー効果、及び実住宅規模での検討を詳細に行った。中でも、パッシブ住宅の性能評価のために得られた重要な知見を3つに分類し、以下に示す。 潜熱蓄熱建材は、物質が状態変化するときの潜熱を利用した蓄熱材料であるため、加熱・冷却面と試験体を接触させないことが求められる。高い再現性を得られる試験方法は、対流加熱法で、昇温速度20[min./K]以上、相変化領域を含まない10℃以上の温度幅が必要であることがわかった。 ・PCM内装左官材の省エネルギー効果の検証を、寒冷地の北海道において実験的な検討を行った。実験棟規模及び実住宅規模での、暖房エネルギーの省エネルギー効果は約30~50%となった。また、非定常熱負荷計算によるシミュレーションにおいて、日本各地における省エネルギー効果を検証したところ、地域特性は見られるものの、年間での削減率は概ね40%程度となった。 ・潜熱蓄熱建材は、太陽熱を室内に蓄熱する性質をもつことから、夏季には冷房負荷が増大することが懸念されているものの、適切な融点の選定により、年間での省エネルギー効果が得られることが確認できた。また、高い断熱性能、計画的な換気手法や日射遮蔽等の住まい方の工夫により蓄熱建材の効果がさらに高まることから、これらの知見から我が国における「パッシブな住まい方」の提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の独創的な点は、自然エネルギー利用を考慮した省エネルギー基準に必要な資料を明らかにしていく点であり、特に、地域特性を考慮しながら、我が国のエネルギー消費の実態を検討し、将来の規格化に向けた検討を行う点である。 また、設計者や居住者が快適な室内環境を形成するために求められる指針を提示できる点である。研究が完成した時には、自然エネルギー利用の設計手法が確立され、快適性と省エネルギー性の観点から、我が国で世界トップクラスの住宅環境設計を一般の建築設計者が行うことができるようになる。 申請者のこれまでの研究では、日射による熱取得を有効利用するために潜熱蓄熱材(PCM)を用いた蓄熱建材を開発し、その省エネルギー効果と快適性ついて検討してきた。外気温が35℃に達する日でも、室内温度は快適範囲内を推移しており、地中熱や太陽熱等の自然エネルギーと蓄熱建材を組み合わせることにより、快適な室内環境形成に効果があることが示された。 また、本研究では、日本の気候特性、住宅の建築と設備の違いを考慮しつつ、我が国に適したパッシブハウスの基準を目指すべく、シミュレーションにより検討を進めた。 潜熱蓄熱材を適用することで、各地域で40%程度の負荷削減効果が確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、潜熱蓄熱(PCM)建材に関する普及率、需要、認知度を調査し、年間を通じた利用方法について、国内外を問わず、調査的な検討を行う。 また、これらの調査を踏まえたうえで、太陽熱利用システムと蓄熱建材を組み合わせた場合のシステムについて提案する。提案したシステムの、日本での適用可能性について言及し、シミュレーションにより、その効果を試算する。 最後に、外気温や日射量等の気候特性を考慮した環境設計手法について提案し、今後進められていく省エネルギー規格改正に役立つ指標を示していく。
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