2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト内在性レトロウイルスが発現調節ネットワークおよび組織がん化過程に与える影響
Project/Area Number |
16J09766
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊東 潤平 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | トランスポゾン / 内在性レトロウイルス / 転写調節ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヒト内在性レトロウイルス転写調節エレメント (HERV-RE) の網羅的同定を行なった。 公的データベースに蓄積したクロマチン免疫沈降シーケンシング (ChIP-Seq) データを再解析し、HERV配列上に存在する転写因子結合部位 (HERV-RE) を網羅的に同定した。さらにHERV-RE活性の細胞特異性を各細胞種におけるヒストン修飾情報およびオープンクロマチン情報を用いて明らかにした。また HERV-REの作用する遺伝子を、遺伝子転写開始点までの距離および染色体高次構造上の相互作用情報 (Hi-C) から予測した。上記のデータを統合し、データベースdbHERV-RE (http://herv-tfbs.com) として公開した。 解析の結果、約80万か所ものHERV-REが同定され、特に多能性幹細胞および免疫細胞において活性を持つHERV-REが多く同定された。HERV-REの種類とそのHERV-REが作用する遺伝子の転写パターンには関連が見られた。例として、多能性幹細胞において重要な転写因子 (SOX2、OCT4、NANOG) の結合するHERV-REは多能性幹細胞特異的な転写パターンを示す遺伝子に作用し、インターフェロン応答に重要な転写因子 (STAT1、IRF1) の結合するHERV-REはインターフェロン応答性遺伝子に作用する傾向が見られた。この結果は、HERV-REが遺伝子の時空間特異的な転写調節に寄与しており、転写調節ネットワークにおいて重要な役割を果たしていることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ヒト内在性レトロウイルス転写調節エレメント (HERV-RE) の網羅的同定を完了することができた。さらには解析結果を統合し、当初の計画通りデータベースdbHERV-RE (http://herv-tfbs.com) として公開した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はThe Cancer Genome Atlas (TCGA) の提供する腫瘍のオミクスデータを再解析し、腫瘍において異常に活性化しているHERV-REを同定する予定である。また、異常活性化したHERV-REがどのような遺伝子に作用しているか染色体高次構造情報(Hi-C)から予測し、HERV-REの異常活性化がどのような遺伝子発現制御異常に繋がり、さらには腫瘍形質の変化につながるか解析する予定である。
|
Remarks |
HERV-REのデータベースdbHERV-REsを作成した。
|