2017 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化の影響評価に用いる極浅海域まで拡張可能な大気・海洋・波浪結合モデル構築
Project/Area Number |
16J09791
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 優樹 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 波・流れ相互作用 / 海洋・波浪結合モデル / 海洋流動 / 地球温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,極浅海域まで拡張した大気・海洋・波浪結合モデルの構築し,これを用いて外洋から沿岸域を統合的に波浪や流れの長期的変化を予測することである.具体的には,不規則波浪場における波の生成する流れの影響(波・流れ相互作用)を考慮した海洋・波浪結合モデルの構築を行い,外洋から沿岸域までの海洋流動を統合的にシミュレーションする.シミュレーションは,過去再現計算と将来変化予測計算を行う.前者の計算結果は,京都大学防災研究所が所有する和歌山県田辺湾沖にある現地観測塔で得られた現地観測結果と比較を行い,構築したモデルの精度検証を行う.精度検証したモデルを用いて,海洋流動の将来変化予測計算を行う. ・不規則波浪場の波による流れを考慮した海洋・波浪モデルの構築 外洋から沿岸域までをシームレスにシミュレーションするモデルの構築を行うため,前年度には,沿岸域を対象としたモデルの構築およびモデルの精度検証を行った.本年度は,外洋を対象にモデルの構築およびモデルの精度検証を行った. ・外洋の影響を考慮した沿岸域の海洋流動解析(将来変化予測計算) モデルの構築後,モデルを用いて外洋から沿岸域までのスケール差を考慮したシームレスな海洋流動の将来変化予測計算を行う.本年度は,この計算の境界条件として用いる北西太平洋海洋長期再解析データセット FORA-WNP30の解析を行った.また,シミュレーションに地球温暖化による海面上昇の影響を考慮するために,気象庁の提供する潮位・潮位偏差現地観測データの解析を行い,国土地理院の提供する一等水準点観測データの解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,極浅海域まで拡張した大気・海洋・波浪結合モデルの構築し,これを用いて外洋から沿岸域を統合的に波浪や流れの長期的変化を予測することである.モデルの構築と並行して,海洋流動の将来変化予測計算の準備を進めることが望ましい. ・不規則波浪場の波による流れを考慮した海洋・波浪モデルの構築 外洋から沿岸域までのスケール差を考慮したシームレスな数値モデルの構築は,外洋,沿岸域それぞれを対象としたモデルの構築を行い,それらを統合するという手順を踏む.前年度に沿岸域を対象としたモデルの構築,本年度に外洋を対象としたモデルの構築を行い,次年度にそれらを統合する準備が着実になされている.このため,モデルの構築に関して,予定通り,おおむね順調に進展していると言える.また,モデルの構築に不可欠な現地観測データは,京都大学防災研究所の所有する和歌山県田辺湾沖の観測塔における現地観測にて得られている. ・外洋の影響を考慮した沿岸域の海洋流動解析(将来変化予測計算) 海洋流動の将来変化予測計算には,計算領域の入力データにあたる境界条件が必要となる.境界条件として利用する,北西太平洋海洋長期再解析データセット FORA-WNP30を解析を進めている.また,地球温暖化の影響を考慮した将来変化予測計算をするために,気象庁の提供する潮位・潮位偏差現地観測データの解析と,国土地理院の提供する一等水準点(地盤沈下)現地観測データの解析を行った.モデル構築後の海洋流動将来変化予測計算の準備も着実に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,極浅海域まで拡張した大気・海洋・波浪結合モデルの構築し,これを用いて外洋から沿岸域のスケール差を考慮したシームレスな波浪や流れの長期的変化の予測を行うことである. ・不規則波浪場の波による流れを考慮した海洋・波浪モデルの構築 外洋から沿岸域までの海洋流動を統合的に評価を行うには,ネスティング計算を用いることが有効的である.前年度までに構築した,外洋と沿岸域それぞれを対象とした海洋・波浪結合モデルを統合し,本年度は,two-wayネスティング計算を利用して,外洋から沿岸域までの海洋流動解析を行う.対象領域は和歌山県田辺湾沖とし,得られた結果は京都大学防災研究所の所有する同沖の観測塔で得られた現地観測データと比較を行い,モデルの精度検証を行う.比較する物理量は,流速,海面海水温,塩分濃度などである. ・外洋の影響を考慮した沿岸域の海洋流動解析(将来変化予測計算) 海洋流動の将来変化予測計算の境界条件に用いるために,北西太平洋海洋長期再解析データセット FORA-WNP30の解析を引き続き進める.将来計算における海面上昇の考慮については,潮位・潮位偏差と地盤沈下の現地観測データを用いる.計算対象領域は,これまでシミュレーションを行ってきた和歌山県田辺湾沖に加えて,大阪湾や北海道・沖縄の沿岸域などの検討も進める.得られた将来計算結果は,SI-CAT 気候変動適応技術社会実装プログラムにおける数キロメートル解像度の日本周辺将来計算結果と比較し,高解像度計算の有効性について検証する.将来計算で得られた結果については,海浜変形,海洋生物などの研究者に提供する予定である.
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