2016 Fiscal Year Annual Research Report
抗体修飾型相変化ナノ液滴と超音波を用いた細胞選択的診断治療の開発
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16J09959
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石島 歩 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ナノメディシン / 超音波がん治療 / 生体医工学 / バイオメディカルエンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,抗体修飾相変化型ナノ液滴と超音波による細胞選択的がん治療の実現であり,以下の検討を行う事を目標とした:(i)殺傷効果の評価,(ii)殺傷効果の作用機序解明,(iii)細胞内気泡化が周囲細胞に与える影響の検討.
In vitro系において殺傷効果が検証可能な系およびメカニズム解明のための高速度撮影系を構築し,ターゲティング性能および抗腫瘍効果が定量解析可能となった.抗体修飾相変化型ナノ液滴が高い抗腫瘍効果を有することを明らかにした.また,生体内において自己免疫活性を誘発させることを示した.以上の結果をまとめた投稿論文(Scientific reports)がアクセプトされた.また,抗体修飾相変化型ナノ液滴の細胞への作用時間が殺傷効果に大きな影響を与えることを確認した.さらに,単一細胞の気泡化が周囲細胞にダメージを与えることが明らかになった.同大学の長棟研究室と共同で,細胞をガラス基板上に光活性化PEG脂質を用いて,細胞をパターニングし,細胞の空間分布を制御することによって,細胞内気泡化が周囲細胞に与える影響を再現性良く,定量的に解析可能な系を作成した.
In vivo系においては,マウスに対してパルス超音波が照射可能な系を構築した.マウス腫瘍内に局所注射した抗体修飾相変化型ナノ液滴が超音波パルス波によって気泡化可能なことを超音波イメージングによって確認した.また,抗体修飾相変化型ナノ液滴をマウス腫瘍内に局所投与し,その滞留性を蛍光イメージング装置を用いて評価した.抗体を修飾していない場合と比較して,腫瘍に長い時間留まることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroにおいて抗体修飾相変化型ナノ液滴のがん細胞に対する選択的殺傷能力の定量的な評価に成功し,今年度において国際誌採択に至るまでの成果をあげた.具体的に,抗体修飾型相変化ナノ液滴の標的率が90%以上であり,細胞内に相変化型ナノ液滴が局在していることを共焦点顕微鏡観察によって確認した.その状態で超音波照射することによって約60%の細胞を殺傷させることに成功した.また,細胞内気泡化の高速度観察を通して,細胞殺傷のメカニズムを明らかにした.加えて,細胞をパターニングし,細胞の空間分布を制御することによって,細胞内気泡化が周囲細胞に与える影響を再現性良く,定量的に解析可能な系を作成した.実際に超音波を照射し,殺傷範囲が定量的評価ができることが示された.
In vivoでの評価に向けた準備を計画通り順調に行った.予備的検討において,相変化型ナノ液滴をマウス腫瘍内に局所投与し,気泡化用超音波を照射したところ,バブルが生成したことを超音波イメージングによって確認でき,さらには腫瘍サイズの縮小を観察した.しかしながら皮膚にダメージの痕跡が確認された.これは正常組織へのダメージが生じていることを示唆されている.超音波パラメータの調整によってダメージが削減できると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
In vivoでの抗腫瘍効果の検証を行うにあたり,以下の項目を評価する.1.蛍光イメージング装置および超音波イメージングによる選択的集積性能の評価.2.超音波照射による腫瘍サイズの変化.3.超音波照射による自己免疫活性の評価.1に関しては,抗体修飾型相変化ナノ液滴に対して共有結合でインドシアニングリーン(ICG)を修飾する.ICGは近赤外領域に励起,蛍光波長を有するためにin vivoにおける蛍光イメージングを行うにあたり,適した色素である.これを修飾した抗体修飾型相変化ナノ液滴をマウス尾静脈から投与し,腫瘍の蛍光強度の経時変化を計測することで,腫瘍集積性を評価する.3に関しては,マウスに抗体修飾型相変化ナノ液滴を投与し超音波照射した後,in vivo二光子顕微鏡を用いて炎症反応を可視化を行うことで確かめる.また,同一マウスに二カ所固形癌を形成させ,一方の腫瘍を治療あり,もう一方の腫瘍を治療なし,として腫瘍サイズの経過観察を行う.治療を施していない腫瘍にも縮小している様子が確認されれば,免疫が活性化されたことを意味することが考えられる.
また,引き続きin vitroにおいて,細胞をガラス基板上に光活性化PEG脂質を用いて,パターニングし,細胞の空間分布を制御することによって,細胞内気泡化が周囲細胞に与える影響を調査する.この系を用いて細胞内気泡化が周囲細胞に与える影響を最小限に留める超音波パラメータ及びPCND物性を明らかにしていく.さらには,周囲細胞にダメージを与える過程を高速度観察することによって,その作用機序を明らかにする.
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 抗体修飾相変化ナノ液滴による選択的細胞内気泡化2017
Author(s)
A.Ishijima, T.Azuma, K.Minamihata, S.Yamaguchi, S.Yamahira, E.Kobayashi, M. Iijima, Y.Shibasaki, T.Nagamune, I. Sakuma
Organizer
日本超音波医学会第90回学術集会
Place of Presentation
栃木,宇都宮東武ホテルグランデ
Year and Date
2017-05-26 – 2017-05-28
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