2016 Fiscal Year Annual Research Report
褐色脂肪機能を活性化する新規栄養素としてのテトラヒドロビオプテリンの役割の解明
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16J09973
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小栗 靖生 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 褐色脂肪組織 / テトラヒドロビオプテリン / 糖尿病 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐色脂肪組織(BAT)は、熱産生の増大を介しエネルギーおよび糖代謝を制御する臓器として注目されている。テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、生体内においてチロシン水酸化酵素ならびに一酸化窒素合成酵素(NOS)等の必須の共因子として働く。今回我々は、BH4合成律速酵素の発現が減損し、BH4産生量の減少が確認されているhph-1 mutantマウスを用いて、BH4がBATならびに全身のエネルギー・糖代謝制御機構に与える影響について検討を行った。 hph-1 mutantマウスおよびバックグラウンドマウスに通常食または高脂肪食負荷を行った結果、通常食飼育下では両マウスの体重に差異はみられなかったが、高脂肪食負荷によりhph-1 mutantマウスでは体重ならびに脂肪量の顕著な増加が観察された。hph-1 mutantマウスでは深部体温の低下が観察され、エネルギー消費量測定の結果、食事誘発性熱産生の低下を示唆する所見が得られた。hph-1 mutantマウスはBATにおける熱産生関連遺伝子発現の低下がみられ、BATの機能障害が示された。またhph-1 mutantマウスは、耐糖能異常ならびにインスリン抵抗性を呈していた。BH4による直接的なBAT制御機構を検討するために、マウスより単離した褐色脂肪細胞を培養し、BH4を曝露したところ、UCP1等の遺伝子発現ならびにNO産生量の増大を認めた。本条件下において、ミトコンドリア機能を反映する酸素消費速度(OCR)を評価すると、BH4の曝露によりOCRの上昇が観察された。 本年度の研究結果より、BH4の欠乏がBATの機能障害を誘発し、肥満の進展、インスリン抵抗性ならびに耐糖能異常の発症に関与することが示唆された。BH4は肥満症および糖尿病の治療標的となる新たな栄養素としての可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BH4が褐色脂肪機能ならびに全身のエネルギー・糖代謝に及ぼす影響を多面的に評価することが出来た。加えて、BH4の直接作用について、単離褐色脂肪細胞を用いた酸素消費速度の測定により生理的に証明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、モデル動物や単離褐色脂肪細胞を用いることにより、BH4による褐色脂肪脂肪機能ならびに全身の代謝制御機構について更なる検討を行う。
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