2016 Fiscal Year Annual Research Report
The neural substrates of the learning transfer during shared cooperative action
Project/Area Number |
16J09988
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
濱野 友希 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | Learning / fMRI / Coorporative action / Motor engram |
Outline of Annual Research Achievements |
二者間の相補的共同作業による技能学習転移の神経基盤描出を目的とし、まず、個人における運動学習の神経基盤を明らかにするため、系列運動学習を用いたfMRI実験を行った。系列運動習得には、速度により課題の難しさを調整し、エラーフィードバックを介して学習する学習形態の他、意識的フィードバックを伴わない学習形態も有り、実際の学習においては両者が関与すると考えられるが、神経基盤の差異は不明である。そこで、同じ系列を学習する際に最大速度で打鍵するmax modeと、一定低速度で視覚合図に合わせて打鍵するconstant modeを交互に繰り返す間のfMRIを行い、両者の違いを検討した。 右利きの被験者58人に左手で学習させ、各モードにおいて、運動と休憩を等時間交互に取らせた。学習に伴う記憶痕跡と運動制御に係る活動を区別し、その残差時系列データの休憩期間にEigenvector centrality(EC)解析を行い、学習に伴う情報集積を評価するためのECを計測した。ECの増強する領域を休止期記憶痕跡として描出した。 Constant modeからmax modeへ成績は転移したが逆の転移は見られなかった。Max modeでは左前頭頂間溝でECが学習に伴い増強し、この領域と左下頭頂小葉で機能的結合が増強した。Constant modeでは、両側背側運動前野と右一次運動野(M1)においてECが学習に伴い増強した。これらの領域のECは運動期間に増加することから記憶痕跡の休止期と活動期の両方を表象していると考えられた。課題関連活動の学習に伴う増強を調べたところ、両モードの共通増強領域は右M1のみであった。 系列運動学習において、最大速度により生成される記憶は左頭頂葉、一定速度での学習の記憶は中心回付近神経回路で表象され、行為遂行時にはM1を含む運動前野-頭頂葉回路が記憶の読み出しを行うと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人間での単純運動技能を対象とし、早期技能獲得に関わる神経メカニズムについて研究を行った。個体内の学習効果の転移に着目し、学習モードの違いにより、記憶痕跡が階層的運動制御システム内で分散して蓄積されることを明らかにした。 同じ指系列運動を学習する際に、最大速度で打鍵することにより難しさを強調するモード(A)と、一定低速度で視覚合図に合わせて打鍵することにより正確さを強調するモード(B)を交互に繰り返す間にfMRIを行い、記憶痕跡の違いを検討した。行動計測により(B)から(A)へ成績は転移したがその逆は見られなかった。fMRIで描出された記憶痕跡は、(A)では打鍵指の素早い移行制御記憶が左頭頂葉で形成され、(B)では打鍵順序系列の記憶が中心回付近神経回路で表象された。さらに行為遂行の際には、一次運動野を含む運動前野-頭頂葉回路が記憶の読み出しを行うと考えられた。 この結果に基づき、2つのプロジェクトを進めている。 1. 皮質レベルでの運動の記憶痕跡を2箇所、fMRIではじめて描出した。これらは、運動学習における速度と正確さを反映していると考えられるが、詳細な局所回路構成は不明である。これを描出するためには、超高磁場MRI(7テスラ)で高解像度fMRIを用いた詳細機能画像に対して、ネットワーク解析を行う必要がある。そのために同一の実験を、7テスラMRIを用いて遂行中である。 2. 個体間の学習結果の転移もこれらの記憶痕跡に関連することが予想されることから、上記の系列運動学習を二者での共同作業を通じて学習する実験系へと拡張している。2者で協力する系列運動学習を用いて、共同作業の学習に関する転移効果を検討するため、まず行動実験を行い、引き続いて二者間の共同作業学習に伴う転移の神経基盤を明らかにする。 これらにより二者間の共同作業による技能学習の転移効果とその神経基盤を明らかにする予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず単独運動学習に伴う記憶痕跡に関する研究を取りまとめて論文化する。現在、英文原著論文を作成中であり、投稿間近である。記憶痕跡の皮質レベルでのネットワーク状態をより詳細に調べるため、同様の実験を超高磁場(7テスラ)MRIに拡張してデータ収集中である。同時に解析も進め論文化を目指す。 一方、二者間での共同作業を通じて学習する実験系へと拡張する準備として、二者で協力する系列運動学習を用いて、行動実験を20ペアで実施した。現在共同作業の学習の転移効果を検討中である。この実験系を2台のMRIを用いて同時計測(hyper-scanning fMRI)の実験へ展開することを予定している。この実験環境は既にせいびされているため、実施に際して新たに必要な物品はない。2017年度前半にデータ取得と解析を完了し、2017年度後半には複数の国内学会で成果発表を行う。また、2017年度内に論文を執筆し国際誌への投稿を目指す。
|
Research Products
(10 results)