2016 Fiscal Year Annual Research Report
多様な学習の道筋を持つ運動課題における新たな制約への適応ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
16J10104
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 耕太 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 運動学習 / 個人差 / 学習ダイナミクス / スポーツ / 適応 / 内在ダイナミクス / ジャグリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、力学系アプローチを用いて多自由度な運動課題の学習過程のダイナミクスを解明することを目的とした。様々な環境や制約下において柔軟にパフォーマンスを遂行することは、熟達化の一要因であるが、このような適応には、学習者個人のこれまでの学習経験などを含んだ内在的なダイナミクスが影響を及ぼす可能性がある。これまでの研究において、多自由度なジャグリング課題では、基礎的なスキルの学習初期段階において、学習者個人が獲得する運動パターンが複数に分化することが報告されている。しかし、これらの固有の運動パターンが、発展的な運動スキルへの適応可能性に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、第一に、熟練者を対象に時間的制約の変化に伴う運動パターンの多様性を周波数特性に着目して検討した。その結果、テンポに応じて、離散的なパターンとリズミックなパターンが切り替わることが明らかになった。 次に、上述した多様なパターン間の切り替えを要する適応課題を設定し、中級者におけるパフォーマンスを各個人固有の運動パターンの差異に着目し、検討を行った。その結果、離散的なパターンを有する参加者が、リズミックなパターンを有する参加者に比べ、課題のパフォーマンスが良いことが示された。つまり、過去の学習過程で獲得された運動パターンという内在ダイナミクスの個人差が、新たな制約への適応可能性を決定づけることを示唆している。 これらの結果は、スポーツ場面などに見られる多自由度な運動課題の長期的な学習過程において、学習初期に生じる多様性が、その後の発展的な過程への適応可能性を決定する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的達成のため、複数の実験やデータ解析を完了している。得られたデータに関して、国内学会(第67回 日本体育学会)や、国内研究会(モーターコントロール研究会)、国際シンポジウム(MEXT Top Global University Project “Waseda Goes Global” Plan Health Promotion: The Joy of Sports and Exercise The 3rd International Symposium)で発表し、本研究の更なる発展性や、問題点などについて有識者とのディスカッションを重ねている。また、来年度の国際学会(North American Society for the Psychology of Sport and Physical Activity 2017 Conference, The 22nd Annual Congress of the European College of Sport Science)での発表が決まっている。なお現在、これらの研究結果をまとめ、国際誌への投稿のため論文を執筆中である。以上のことから、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、異なる適応課題を設定し、適応可能性を決定づける内在ダイナミクスの要因について、様々な階層から検討する予定である。
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