2016 Fiscal Year Annual Research Report
非代謝型合成脂質を用いて解き明かす脂質多様性の意義
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16J10129
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 嘉一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ホスファチジルグリセロール / 脂肪酸代謝 / シアノバクテリア / リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は多様なホスファチジルグリセロール(PG)分子種の存在意義の解明を目的として、有機合成した非代謝型のPGを用いた実験系の確立を行った。シアノバクテリアであるSynechocystis sp. PCC 6803のPG合成欠損株(pgsA株)は外部からPGを細胞内に取り込めるため、特定の脂肪酸が結合したPGを添加した培地で育てた変異株の細胞の性質を解析することで、PG分子種の機能の違いを解析できると考えられる。しかし、通常のPGは脂肪酸がエステル結合で結合しているため、細胞内に取り込まれた後、リパーゼによる加水分解を受けてリモデリング(脂肪酸を取り替える反応)される。そこで、細胞内でリモデリングによる脂肪酸の付け替えが起こらない、脂肪酸がエーテル結合で導入されたPG分子を共同研究者に有機合成してもらって解析を行った。sn-1位に18:2、sn-2位に16:0をエーテル結合で導入したPGでpgsA株を培養したとき、エステル型PGを添加したときと比べて生育に多少影響があるものの、合成したエーテル型PGを利用して変異株が増殖できることが判明した。さらにsn-2位の脂肪酸を12:0, 14:0, 18:0, 20:0に改変したエーテル型PGで変異株の細胞を培養したところ、sn-2位の脂肪酸の鎖長に応じて細胞の増殖速度に違いが出ることが明らかとなった。sn-2位の脂肪酸が16:0であるときに他の鎖長の脂肪酸と比べて増殖速度が速くなり、sn-2位を12:0に改変したPGでは生育が大きく阻害された。このことからPGのsn-2位に16:0の脂肪酸が結合していることが重要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は脂肪酸結合部位をエーテル結合に改変したPGの有機合成を依頼し、当研究室においてシSynechocystis sp. PCC 6803のPG合成欠損株(pgsA)に取り込ませ、その時の細胞の増殖、光合成活性を解析した。通常、光合成生物ではエーテル型脂質は生体内に存在しておらず、本研究でシアノバクテリアが人工的に合成したPGを取り込んで、生育できることがあきらかになった。非代謝型の脂質を使用して、任意の脂肪酸を導入したPGを生体内に取り込ませる実験系を始めて確立できた。 また、sn-2位の脂肪酸を本来PGに結合している16:0の脂肪酸を基準として、短鎖脂肪酸である12:0, 14:0や長鎖脂肪酸である18:0, 20:0に改変した。これらのエーテル型PGをpgsAに取り込ませた結果、Synechocystisには存在していない12:0と20:0の脂肪酸に改変した時に、20:0はある程度生育を相補できるのに対して、12:0では生育が大きく阻害されることが明らかとなった。これにより、sn-2が16:0の脂肪酸であることにより、PGが生体内で正しく機能することがわかった。今後はsn-2の脂肪酸が他の脂肪酸に変わった時に生体内にどのような影響を及ぼしているかを解析することで、sn-2の脂肪酸が16:0である意義を解明できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
sn-2を様々な脂肪酸種に改変したPGをSynechocystisに取り込ませることで細胞の増殖や光合成に影響が確認された。光合成生物ではPGは主要なチラコイド膜脂質の1種であり、脂質二重層を形成する重要な脂質である。脂肪酸種の変化することで膜の流動性が変化して、チラコイド膜の形成や膜タンパク質の機能に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで各エーテルPGを添加した時の細胞を電子顕微鏡で解析することで、チラコイド膜の構造変化を確認できると考える。また膜の流動性が変化した場合、この細胞では光、熱ストレスにおける感受性が変化することが考えられる。sn-2の脂肪酸を短鎖または長鎖の飽和脂肪酸に改変したPGを添加したpgsA株の細胞に、様々な条件のストレスを与えて光合成活性を測定することで、脂肪酸の鎖長の重要性を明らかにする。 sn-2を12:0の脂肪酸に改変したPGを利用して増殖した細胞では、細胞あたりのクロロフィル含量が劇的に低下していた。この時の細胞ではクロロフィルの合成が阻害されているか、もしくは、クロロフィルの分解が促進されている可能性が考えられる。今後はクロロフィルの合成か分解のどちらが影響を受けているかを、クロロフィル含量の経時変化をモニターすることではっきりさせる。もし、クロロフィル合成が阻害されている場合、クロロフィル中間体を定量することで、12:0型PGがクロロフィル合成経路のどの部分に関わっているか明らかにする。
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