2016 Fiscal Year Annual Research Report
自己修復型金属配線を用いた高機能・高伸縮耐性フレキシブルデバイス
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16J10143
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古志 知也 早稲田大学, 基幹理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 自己修復 / フレキシブルデバイス / 金属ナノ粒子 / 誘電泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,自己修復型金属配線を用いたフレキシブルデバイスの実現を目的とする.き裂が生じた金属配線を金属ナノ粒子分散液で覆った構造において,配線に電圧を印加すると,き裂にのみ生じる電界によりき裂付近の粒子に誘電泳動力が生じ,粒子がき裂にトラップされ,配線が修復される.デバイス内の配線に生じるき裂の幅は数十um程度であることが多いが,これまで研究では幅が4 umまでのき裂しか修復できなかった.そこで本年度は,より大きい幅のき裂の自己修復を実現することとした. ①大きいき裂を修復するための電圧・電流条件の解明:従来研究により,幅が数十um程度のき裂でも,印加電圧を大きくすることで修復が生じることが予想されたが,実際には修復は生じなかった.そこで本研究では,き裂を架橋した粒子に流れる電流に着目した.これはつまり,粒子がき裂を架橋すると同時に,印加電圧によって生じる電流が架橋した粒子にジュール熱を発生させ破壊すると考えた.したがって,粒子の架橋後に小さな電流が流れるように印加電圧と電流を制御すれば,修復が生じると考えた.実際に,ガラス基板上にき裂の幅が10 umの金配線を製作し電圧を印加したところ,電圧が17 Vrms以上,電流が41 mArms以下のときに修復が生じることを確認した.同様にして,幅が30 umまでのき裂の修復に成功した. ②デバイス内の配線の修復:実際にフレキシブルデバイスを製作し,上記で明らかにした条件をもとに,デバイス内の配線でのき裂の修復実験を行った.製作したデバイスを可動ステージに固定し,電圧を印加しつつ繰り返しの伸縮変形を付加した.実験の結果,デバイスを27%まで引っ張ったところ配線に断線が生じたが,3.4秒後に修復が生じた.また,50回以上の繰り返し修復を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度の初めは計画通り,自己修復型金属配線のパッケージング化の検討およびデバイス伸縮時のひずみ分布に関する研究を行っていた.これらの研究の過程で,大きなき裂の修復には修復電圧だけでなく,修復時の電流が重要であることを見出した.その結果,伸縮時に自然に発生する10 μm以上き裂の修復が可能となり,来年度以降の計画であった自己修復型金属配線のデバイス応用を今年度で実現することができた.この成果は研究業績にも表れており,筆頭著者として国際論文誌への投稿が1件(条件付き採択の判定で改訂中),国際学会での口頭発表が2件(うち1件は,分野で最も権威のある国際学会で採択率が10 %以下の口頭壇上発表として採択),受賞が1件の成果をあげた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度製作したフレキシブルデバイスは,1組の表面実装型LEDと自己修復型金属配線で構成された,構造が単純なデバイスであった.そこで来年度以降は,自己修復型金属配線を用いたフレキシブルデバイスの実用化を目指し,より複雑な構造のデバイスの製作と評価を行う. ①フルカラーLEDアレイデバイス:表面実装型LEDと自己修復型金属配線を複数組み合わせたフルカラーLEDアレイデバイスの製作と評価を行う.具体的には,大きさ2 mm×1 mm程度で色が3種類のチップLEDをデバイスに組み込み,繰り返しの伸縮変形を付加して,伸縮性の評価を行う. ②水着表面におけるせん断応力計測デバイス:次に,従来は硬い基板上で作られているMEMSセンサをデバイスに組み込むことで,本手法が様々なセンサを用いても実現可能であることを示すとともに,これまで計測が不可能であった物理量を計測することを目指す.具体的には,水着表面に貼り付けることにより,流体から受けるせん断応力を直接計測できるデバイスを製作する.デバイスの機能部としては,せん断応力MEMSセンサを用いる.このセンサ自体は従来研究を参考に自作することを考えている.
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