2017 Fiscal Year Annual Research Report
自己修復型金属配線を用いた高機能・高伸縮耐性フレキシブルデバイス
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16J10143
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古志 知也 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | フレキシブルデバイス / 金属配線 / き裂の発生形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,フレキシブルデバイスに用いられる金属配線において,き裂の発生形態を決める要因を明らかにした.従来研究において,金属配線を引っ張ったときに,幅は小さいが細かいき裂が多数入ったり,幅は大きいが単一のき裂が入ったりなど,異なるき裂の発生形態が観察されていた.き裂の発生形態は金属配線自体の伸縮性にも影響するが,その要因は未だ明らかではなかった.そこで本研究では,き裂の発生形態を決める要因を明らかにするため,モデル化による解析と実験によるき裂の観察を行った. ①き裂発生形態の要因の解析:伸縮基板に埋め込まれた金属配線の変形についてモデルを考え,力のつり合いの関係式から導出を行ったところ,き裂の発生形態は,配線と基板の伸び剛性の比によって決定されることが示唆された.配線よりも基板の伸び剛性の方が十分に大きい場合(伸び剛性の比がほぼゼロの場合),微細なき裂が多数生じる複数き裂発生形態,その逆の場合,大きな1つのき裂が生じる単数き裂成長形態になることが考えられた. ②実験によるき裂の発生形態の観察:①の解析結果を検証するため,伸び剛性の異なる金属配線を製作し引っ張ることで,実際に生じるき裂の観察を行った.直線形状と波形状の2種類の配線を製作し,配線の厚さを変化させることで,配線と基板の伸び剛性の比を変化させた.配線には銅を,基板にはポリウレタンを用い,直線形状の配線の厚さは0.04 μmから1.17 μm(伸び剛性の比は0.03から0.78),波形状配線の厚さは2 μmから10 μm(伸び剛性の比は0.89から3.56)とした.配線の厚さは,従来研究を参考にして決定した.直線形状の配線の場合,伸び剛性の比が0.03のときは複数き裂発生形態が観察され,伸び剛性比が0.35と0.78のときは単数き裂成長形態が観察された.また,波形状配線においては単一き裂成長形態のみが観察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度はフレキブルデバイス内の金属配線におけるき裂の自己修復を実現しており,昨年度の段階で当初の計画以上の研究成果を挙げた.そのため今年度については,自己修復型金属配線を用いたフレキシブルデバイスの更なる集積化を目指すべく,デバイスの製作プロセスの検討を行った.4月頭から7月末にかけてはドイツの研究機関であるFraunhofer IZMにて研究滞在を行い,デバイスの製作プロセスの検討を行うだけでなく,異文化の中で研究する経験を積むなど,研究者としての能力の向上を目指し研究活動を行った.結果として,ポリウレタン基板上の金属配線の製作プロセスを確立するだけでなく,「金属配線に生じるき裂の発生形態の要因の解明」を行い(前項の研究実績の概要を参照),筆頭著者として国際論文誌に2件が掲載される成果を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に製作したフレキシブルデバイスは,1組の表面実装型LEDと自己修復型金属配線で構成された単純な構造のデバイスであったため,デバイスの更なる集積化を行うべく,今年度はデバイスの製作プロセスの検討を行った.来年度は今年度の成果を踏まえ,自己修復型金属配線と複数の抵抗変化型圧力センサを組み合わせた,フレキシブル圧力センサアレイデバイスの製作と評価を行う. ①自己修復型金属配線の繰り返しの伸縮変形における抵抗変化の計測:上記のデバイスの回路設計を行うため,まずは自己修復型金属配線の繰り返しの伸縮変形における抵抗変化の計測を行う.これまでの研究では,自己修復型金属配線を1回断線させた場合における抵抗変化のみを計測していたため,配線を繰り返し伸縮させて断線と自己修復を繰り返し行った場合における抵抗変化は未だ明らかではなかった.そこで,配線の抵抗を計測しつつ配線を繰り返し伸縮させるための実験セットアップを構築し,繰り返しの伸縮変形における抵抗変化の計測を行う.具体的には,電動ステージとデジタルマルチメータを同期させ,配線の伸び率と抵抗の時間変化を同時に計測する. ②フレキシブル圧力センサアレイデバイスの製作と評価:①で得られた計測結果をもとにデバイスの回路設計を行う.デバイスの機能部には抵抗変化型圧力センサを用い,自己修復型金属配線の繰り返し伸縮変形における抵抗変化のオーダが圧力センサの抵抗変化のオーダよりも10の3乗程度小さくなるように回路設計する.その後は,実際にフレキシブル圧力センサアレイデバイスを製作し,繰り返しの伸縮が生じる表面での圧力分布の計測を行うことで,デバイスの評価を行う.
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