2016 Fiscal Year Annual Research Report
Neural stem cell in the sensory circumventricular organs
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16J10225
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
古部 瑛莉子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 脳室周囲器官 / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
成体の海馬において神経幹細胞の存在が報告されてから十数年経過し、海馬の神経新生が記憶や学習に重要であることや、神経新生の異常はうつ病の発症を引き起こすことが明らかになっています。一方、我々は、脳幹の脳室に面する脳室周囲器官の4部位(終板器官、脳弓下器官、正中隆起、最後野)に神経幹細胞が存在していることを新たに発見しました。さらに昨年度はNestin-CreERT2/CAG-CATloxP/loxP-EGFPトランスジェニックマウスを用いて神経幹細胞のマーカータンパク質の一つであるNestinが脳室周囲器官の終板器官、脳弓下器官及び延髄のCentral canal存在する上衣細胞の一種であるタニサイト様細胞に発現していることを明らかにすることが出来ました。このとき、脳室周囲器官ではEGFPはその誘導に必要なtamoxifenを単回投与後24時間で誘導されることが判明しました。さらに、Nestinと神経幹細胞マーカーとされるGFAP及びSox2の免疫染色を用いてcharacterizationを行ったところ、タニサイト様細胞でのNestin陽性細胞の60%以上がSox2および50%以上がGFAP陽性であることが明らかになりました。神経幹細胞は、脳部位により固有の機能を持つので、脳室周囲器官での神経幹細胞の機能は海馬の神経幹細胞とは異なると考えられます。脳室周囲器官は、体温や血圧などのホメオスタシス調節、病原体感染時の免疫応答などに関与していることが知られています。よって次年度以降は、体温や血圧変化を引き起こす刺激やLPSなどの感染刺激、嘔吐刺激などにより脳室周囲器官での神経幹細胞の増殖や分化の変化を調べ、機能相関性を明らかにすることにより、脳室周囲器官の神経幹細胞がこれらの機能調節に関与することを明らかにします。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、Nestin-CreERT2/CAG-CATloxP/loxP-EGFPトランスジェニックマウスと免疫組織化学を用いて、脳室周囲器官タニサイト様細胞が神経幹細胞であることを証明しました。この結果は第39回日本神経科学大会および第46回北米神経科学会にて報告するとともに、現在論文としてまとめています。脳室周囲器官に存在する神経幹細胞の部位特異的な機能およびその異常による病態の解明は、脳梗塞などの脳損傷時の神経幹細胞による修復過程の研究するにあたっての基盤となる知見であり今後の発展が期待されます。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度 海馬神経幹細胞の増殖と分化は、迷路学習や刺激の多い環境により促進、ストレスにより減弱することが知られています。このように、神経幹細胞増殖と分化は脳部位固有の機能と密接な関連性があります。脳室周囲器官は体温や血圧などのホメオスタシス調節、病原体感染時の免疫応答などの多様な生理機能反応に関与することが知られており、脳室周囲器官の神経幹細胞がこれらの機能に関与することが推測されます。そこで、体温や血圧変化を引き起こす刺激やLPSなどの感染刺激、嘔吐刺激などにより脳室周囲器官における神経幹細胞の増殖や分化の変化を調べることで機能関連性を明らかにします。
平成30年度 海馬神経幹細胞の増殖阻害はうつ状態を引き起こし精神疾患の原因となることが報告されています。感知系脳室周囲器官は、体温や血圧などのホメオスタシス調節、病原体感染時の免疫応答、嘔吐などの機能調節を持つことが知られています。そこで、糖尿病、高血圧、免疫不全などの動物疾患モデルを用いて、脳室周囲器官の神経幹細胞に増殖や分化異常がないか調べます。さらに、神経幹細胞の増殖を阻害した場合に、これらの機能に障害が生じないか調べることで、脳室周囲器官に起因する病気を特定します。病気の原因が特定された場合は、神経幹細胞の増殖や分化を制御することで新たな治療の標的とならないか調べます。
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