2016 Fiscal Year Annual Research Report
気泡含有ガラス微小球を用いた太陽光励起レーザーの開発
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16J10230
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
熊谷 傳 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | WGM光共振器 / レーザー / 電磁界シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
クリーンで無尽蔵なエネルギー資源である太陽光を,波長や位相の揃ったレーザー光に変換することはエネルギーの効率的な利用を考える上で非常に重要なテクノロジーである.マイクロメートルサイズのガラス微小球は,球の界面で光が全反射を繰り返しながら周回することで球の内部に高い効率で光を閉じ込め,波長の揃ったコヒーレント光を生み出すWhispering Gallery Mode (WGM)光共振器として機能する.欠陥構造(気泡)を付与したガラス微小球光共振器は,幅広い波長域に渡って効率的に光を閉じこめられることが光励起実験により示されている.このメカニズムを明らかにすることで,太陽光励起レーザーを設計するうえで重要な指針が得られると考え,電磁界シミュレーションにより光共振モードの解析を行った. 欠陥の付与により,ガラス微小球内で「縮退の解けたWGM」が誘起されることが明らかになり,同一の球状光共振器内で複数の共振波長を示すため,線幅の広い光源を光結合させることが可能となる.モードナンバーmの偶奇および偏光で縮退の解け方が異なり,欠陥と共振モードの相互作用が大きいほど共振波長の変化が大きいことを明らかにした.欠陥構造を設計し,望みの位置に導入することによって縮退の解けたWGMの光共振状態を制御可能と言える.また,欠陥を励起光の照射位置とすることで,光を効率的に結合させることが可能となった.これらの結果は,気泡含有ガラス微小球が太陽光励起レーザーに適した,光共振器構造であることを意味している.以上の結果を,論文誌,国際学会および国内学会にて報告しており,国内外問わず多くの反響をいただいている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,電磁界シミュレーションによって光共振器構造を最適化する予定であった.当初の計画通り電磁界シミュレーションを行い,「縮退の解けたWGM」という光学現象が生じることを明らかにした.これはにより,同一の球状光共振器内で複数の共振波長を示すため,線幅の広い光源を光結合させることが可能となると言える.このような結果から,研究の進捗状況は概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー活性物質である希土類イオン(例えばNd3+)単体では太陽光を効率よく変換できない.これは,可視光の吸収に本来禁制遷移であるf-f遷移を利用しており,吸収線幅が狭く吸収断面積は小さいためである.そのため増感剤となる物質を共添加することで効率を向上させる.ここでCr3+は,可視領域に幅広い吸収を持ち,Nd3+と共添加した場合は増感剤として働くことが知られている.今後は,太陽光の変換効率の優れたガラス材料の探索をし,それを用いてガラス微小球光共振器を作製する.この気泡含有ガラス微小球に対し,人工太陽光を光源として光励起実験を行い,レーザー発振しきい値およびレーザー取り出し効率を測定し,最終目的である気泡含有ガラス微小球を用いた太陽光励起レーザーを実現する.
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Research Products
(4 results)