2016 Fiscal Year Annual Research Report
内在性核内受容体のケミカルラベリングによる動態・機能解析
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16J10316
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西川 雄貴 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質 / ケミカルラベル / 一酸化窒素 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
一酸化窒素(NO)は心臓血管系、神経系、免疫系などの多様な生理機構において重要なシグナル伝達物質である。NOの生理機構は主に、タンパク質のニトロシル化、ニトロ化、活性酸化窒素種(RNS)としての細胞ストレスであり、このことから、高濃度NO環境下において細胞内プロテオーム(発現量、翻訳後修飾パターン)が定常状態と大きく異なると予想される。これまでに、NOの局在に関してはNO検出蛍光プローブ、NOの機能に関してはNOドナーを用いた研究が盛んに行われている。しかしながら、NOに依存して変化するプロテオームを網羅的に解析するツールは未だに開発されていない。そこで申請者は、NOの関わるプロテオームを解析するために、NOに応答して活性化し、タンパク質との反応性が大きく向上するNO応答性ラベル化剤の開発を行った。このラベル化剤はアシル化されたo-phenylenediamine構造を有しており、これがNOと酸素存在下でacylbenzotriazoleに変換されると、アシル基の求電子性が高まりタンパク質へのラベル化反応が進行すると期待した。実際に試験管内で細胞ライセートを用いたラベル化実験を行ったところ、狙い通りNO存在化でのみタンパク質へのラベル化が進行した。次に、炎症刺激により誘導型NO合成酵素(iNOS)が発現することが知られているマウスマクロファージ由来のRAW264.7細胞を用いた検討を行ったところ、iNOS発現誘導条件においてラベル化タンパク質の種類と量が顕著に増大した。このことから、今回開発したラベル化剤は生細胞で産生されるNOにも応答することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生理的意義の高い一酸化窒素(NO)に応答して活性化するタンパク質ラベル化剤を世界で初めて開発した。また実際にこのラベル化剤を用いることで、生細胞において産生されるNOに応答して細胞内のタンパク質を網羅的にラベル化できることを実証でき、NOを産生する細胞のプロテオーム解析に有用であることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、培養神経細胞や脳組織切片といったより複雑な系での適用を目指していく。具体的には、これらの細胞や組織におけるNO応答ラベル化実験を行い、ラベル化されたタンパク質を解析することで、高濃度のNO環境下に存在するタンパク質群を同定していく。またNOだけでなく、生理的意義の高い金属イオンであるCu(I)に応答するタンパク質ラベル化剤の開発も行っていく。
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Research Products
(6 results)