2017 Fiscal Year Annual Research Report
内在性核内受容体のケミカルラベリングによる動態・機能解析
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16J10316
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西川 雄貴 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質 / ケミカルラベル / 銅イオン / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
銅(Cu)はsuperoxide dismutase(SOD)をはじめとする多くの酸化還元酵素の活性中心に存在しており、生物の生命活動における必須金属の一つである。生体内においては、基本的にCu(I)あるいはCu(II)の酸化状態を取っており、特に細胞内のような還元環境ではCu(I)として存在する。Cuは必須金属である一方で、過剰摂取はROSの発生を引き起こし、生体毒となる。そのため、生体内におけるCuイオンの取込・放出機構はCu関連タンパク質によって厳密に制御されている。この制御が狂ってしまうと、遺伝子性疾患であるMenkes病、Wilson病や、Alzheimer病などの神経疾患を引き起こすことが知られている。これまでChristopher J. Changらを中心に幾つかのCu(I)プローブが開発されており、Cu(I)の実態が少しずつ解かれつつある。しかしながら、Cu(I)の存在する環境がどのようなもので、どのようなタンパク質が絡んでいるかは未だに明らかにされていないことが多い。そこで申請者は、Cu(I)に応答して活性化し、タンパク質との反応性が大きく向上するCu(I)応答性ラベル化剤を開発し、Cu(I)環境下に存在するタンパク質を同定することを目的とした。 Cu(I)応答性ラベル化剤の分子設計として、当研究室で開発したZn(II)応答性ラベル化剤のキレーター部位であるDpaを、Cu(I)蛍光プローブに用いられているCu(I)のキレーターに変更することを考えた。実際に設計したラベル化剤は、試験管内及び生細胞内においてCu(I)濃度に依存してタンパク質をラベル化した。今後は、Cu(I)が過剰に放出される神経細胞などのモデルを用いて、高濃度Cu(I)環境下に存在するタンパク質のプロテオーム解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生理的意義の高いCu(I)イオンに応答して活性化するタンパク質ラベル化剤を世界で初めて開発した。また、実際にこのラベル化剤を用いることで、生細胞内におけるCu(I)に応答して細胞内のタンパク質を網羅的にラベル化できることを実証し、高濃度Cu(I)環境下に存在するタンパク質のプロテオーム解析に有用であることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、培養神経細胞を用いて、高濃度Cu(I)環境下に存在するタンパク質のプロテオーム解析を行っていく。具体的には、Cu(I)が放出されるような刺激を培養神経細胞に与え、開発したラベル化剤を適応していく。
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