2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J10408
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 総一郎 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | カキ / プロアントシアニジン / 甘渋性 / 遺伝解析 / 倍数性 / 染色体歩行 / トランスクリプトーム解析 / 共発現ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、カキの完全甘ガキ(PCNA)性を支配する対立遺伝子(AST/ast)の同定およびその制御メカニズム解明である。H28年度は、カキ甘渋性決定遺伝子ASTの同定および機能解析に向けて以下の研究を行った。 1.AST遺伝子座におけるカキ/マメガキ比較ゲノム解析 六倍体であるカキを用いた直接の遺伝解析は困難であることから、カキの二倍体近縁種であるマメガキを利用して参照情報の構築を試みた。既存のAST連鎖マーカーを起点としてマメガキBACライブラリによる染色体歩行を進め、AST周囲に10クローン・1.3 Mbからなるマメガキ物理地図を得た。続いて、得られた配列情報を基に連鎖解析用のマーカーを作出し、マメガキ交雑集団 (N = 336) およびカキ甘渋性分離集団 (N = 296) を用いて、AST領域における遺伝地図構築を試みた。AST領域におけるマメガキの組換え頻度は約220 kb/cMであり、同領域がユークロマチン領域に位置することが示唆された。一方、カキにおける解析では複数の組換え個体が得られたものの、表現型との比較によりAST座乗領域を特定するには至らなかった。 2.甘渋性に関するトランスクリプトーム解析 カキ甘渋性分離集団の幼果からRNAを抽出し、Illmina Hiseqによりトランスクリプトームを取得した。PCNA/non-PCNA間で発現変動した遺伝子の階層的クラスタリングによって同定した発現クラスターのうち、プロアントシアニジンの蓄積と一致して発現するクラスターには、フラボノイド生合成関連遺伝子に加えて、光刺激を主とする非生物学的ストレス関連の遺伝子が多く含まれていた。また、共発現ネットワーク解析により、少数の転写因子(DkMYB4、DkMYC1、LOL1-like)が、甘渋間の差異において中心的な役割を果たすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度行った甘渋性の制御メカニズム解明を目的としたカキ甘渋性分離集団における果実トランスクリプトーム解析では、プロアントシアニジン蓄積において重要な時期を捉えることができたことから順調に進展し、フラボノイド生合成関連遺伝子とストレス関連遺伝子が同調的に発現するという興味深い結果が得られた。さらに、制御因子の候補を同定するために行ったWGCNAパッケージによる共発現ネットワーク解析が有効に作用し、非常に少数の転写因子において高い中心性が得られた。 次に、甘渋性決定遺伝子であるASTの同定を目指したゲノム解析では、近縁二倍体種であるマメガキにおける染色体歩行が順調に進展している。この配列情報を用いたマメガキの遺伝解析によりASTは比較的組換え頻度の高い領域であることが示されたことから、遺伝子同定に向けた今後の見通しが立ったと考えている。しかしながら、カキ甘渋性分離集団を用いた遺伝解析では、想定よりも組換えが検出されず、AST座乗領域の片端の特定のみにとどまった。今後、AST座乗領域の遺伝解析を継続する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
甘渋性決定遺伝子の同定にむけて染色体歩行および遺伝解析を継続する。h28年度の解析により、AST座乗領域の片端を決定することができたことから、h29年度は未だ特定できていないもう片側の端の特定を重点的に試みる。h28年度の解析では、特定が必要な側で組換えがある個体が得られているが、生理落果の非常に多い個体であるため、表現型の決定に至っていない。この個体についてはh28年度に生育途中の果実を採取済みであるため、プロアントシアニジン含量の測定およびフラボノイド関連遺伝子の発現解析により表現型の特定を試みる予定である。また、マーカー作成を容易にするため、前述の甘渋性分離後代のトランスクリプトーム配列を利用し、甘渋性と共分離する多型の網羅的探索を試みる。AST座乗領域を特定した後、カキおよびマメガキの発現情報を用いて候補遺伝子/多型の網羅的探索を行う。順調に進めば、候補多型を検出した後、京都大学植栽の遺伝資源約180品種について候補多型のジェノタイピング・品種の表現型との比較を行うところまでを検討している。 また、甘渋性制御メカニズムの解明にむけて、h29年度は、h28年度に得られた有力な制御因子候補のうち、プロアントシアニジン蓄積に対する効果が明らかとなっていないDkMYC1およびLOL1-likeについてカキカルスを用いた形質転換により、機能解明を試みる。
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Research Products
(5 results)