2017 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロドロップレットを用いた単一微生物からの生合成遺伝子クラスターの超並列解析
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16J10443
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西川 洋平 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | シングルセルゲノミクス / 全ゲノム増幅 / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
環境中の微生物は99%以上が難培養性であり、生物界におけるダークマターと例えられる。難培養微生物が有する遺伝子の詳細な解析には、単一細胞レベルでのゲノム解析が有効であるが、従来までの手法では、多様な細胞種に適用可能なスクリーニング量が得られていなかった。そこで本研究では、環境中の微生物がもつ全ゲノムの情報を単一細胞レベルで解析し、標的微生物が有する遺伝子の情報を効率的に取得する技術の開発を目指す。 本年度の研究では、前年度に開発した微小液滴内での全ゲノム増幅技術を用いて、得られた増幅産物からの次世代シーケンサによる配列解析を行った。この結果、微小液滴を用いた単一細胞のゲノム増幅技術が、従来法に比べより高精度かつ多数の単一細胞に対して応用が可能な技術であることを実証することができた。以上の結果をまとめ、論文発表を行った。 本年度はまた、開発した手法の環境微生物への応用を行い、土壌細菌やマウスの腸内細菌などを対象としたゲノム解析に取り組んだ。これにより、土壌細菌からは17個、マウス腸内細菌からは72個の単一細胞由来のゲノム情報が獲得され、得られた情報の約65%が国際基準で定められた指標においてHigh-qualityもしくはMedium-qualityに分類されることが明らかとなった。以上の結果から、環境の異なる様々な条件のサンプルを用いた場合においても、開発した手法によって高品質なゲノム情報が取得可能であることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定と比較し、本年度はより多種多様な種類の環境サンプルを対象に実験を進めることができた。これにより、条件の異なるサンプルを用いた場合の微生物画分の調製方法についてのノウハウが蓄積された。結果として、開発した手法が幅広い生物種に有用であることを実証することができた。また、初年度に開発した技術の簡略化に向け、新たな全ゲノム増幅法の開発にも現在取り組んでおり、最終年度に向けて成果を積み重ねている。一方で、現在の手法ではDNA結合色素を用いて増幅産物の検出を行っており、当初の計画であった増幅産物から特定の遺伝子を検出する手法の開発には至っていない。最終年度に向けての課題はいくつか残されているが、環境微生物を対象としたゲノム解析によって、開発した技術の有用性を実証することができたため、全体としては当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえ、今後の研究では開発したゲノム増幅技術のさらなる改良を行い、溶菌方法の強化などによって、より幅広い微生物種に適用が可能なゲノム増幅法を開発する。これにより、これまで単一細胞での解析が行われていなかった難培養微生物について、ゲノム情報の取得を可能とする。また、DNA増幅後に標的の配列を検出する手法についても今後開発を行い、これまでに開発したゲノム増幅機構と組み合わせることによって、本研究課題の目的であったシングルセルゲノミクスの飛躍的な効率化を達成させる 。標的サンプルとしては、宿主の組織内に共生する微生物など、よりゲノム解析の難易度が高いサンプルを用いることで、本手法の汎用性を示していきたい。さらに、得られたゲノム情報に対して情報解析技術を組み合わせることによって、より詳細な解析を進めていく方針である。
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Research Products
(9 results)