2016 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスにおける複製忠実度を基盤としたウイルス集団の生存戦略の解明
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16J10490
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
森 幸太郎 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ウイルスポリメラーゼ / 複製忠実度 / インフルエンザウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼにおいて、複製忠実度に影響を及ぼすドメインやアミノ酸の詳細は明らかでない。そこで、本年度は複製忠実度測定系の構築、及び遺伝学的手法による複製忠実度に関わるアミノ酸部位の同定を試みた。 インフルエンザウイルスでは、宿主のRNAポリメラーゼI(Pol I)プロモーター支配下にウイルスゲノムを配置したプラスミド(ウイルスゲノム発現ベクター)と共に、ウイルスポリメラーゼ発現ベクターを細胞内に導入することで、細胞内でインフルエンザウイルスのゲノム複製を再構成できる。そこで、Pol Iプロモーター支配下にストップコドンを導入したGFPが挿入されたモデルウイルスゲノム発現ベクターを、ウイルスポリメラーゼ発現ベクターとともに細胞内に導入し、ストップコドンの復帰変異が起きた細胞をFACSにより検出する実験系を構築した。この実験系により、GFP陽性細胞の出現頻度を複製忠実度の指標とし、簡易的に複製忠実度を比較できる。 インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼにおける複製忠実度に影響を及ぼすアミノ酸を特定するため、ウイルスポリメラーゼの変異体cDNAライブラリーをランダム変異導入法にて作製した。この変異体ライブラリーを、構築した複製忠実度を比較する実験系に導入し、FACSソーティングによりGFP陽性細胞 (変異が導入された細胞) を回収するというスキームを繰り返した結果、ウイルスポリメラーゼサブユニットの1つであるPB1上の82番目のアミノ酸がYからCに変異した株 (PB1-Y82C)が得られた。PB1-Y82C変異株の複製忠実度を次世代シーケンサーにて測定したところ、野生型と比較して塩基置換変異の導入が多いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼにおいて複製忠実度に影響を及ぼすドメインやアミノ酸の詳細は明らかでない中、スクリーニング系の構築、及び変異体を単離したことは当初の計画通りである。加えて、別のスクリーニング方法として薬剤による複製忠実度が変化した変異体を単離する系も確立し、目的の変異体と推測されるものが単離できているため、順調に計画が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築した変異体のスクリーニング系、及び現在構築中の薬剤によるスクリーニング系を用いて、新たな複製忠実度の異なる変異体の単離を試み、複製忠実度に影響を与えるドメインを明らかにする。同定したアミノ酸の複製忠実度に影響を及ぼすメカニズムについて、生化学的に明らかにしていく。
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Remarks |
http://www.bikaken.or.jp/
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