2017 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスにおける複製忠実度を基盤としたウイルス集団の生存戦略の解明
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16J10490
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
森 幸太郎 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 複製忠実度 / ウイルスポリメラーゼ / インフルエンザウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスポリメラーゼにおいて複製忠実度に影響を及ぼすアミノ酸残基のスクリーニングを行ってきた。その結果、ウイルスポリメラーゼサブユニットの1つであるPB1上の66番目のアミノ酸がLからVに変異した株 (PB1-L66V)、98番目のアミノ酸がSからAに変異した株 (PB1-S98A) が得られた。各変異株の感染細胞からウイルスゲノムを精製し、変異蓄積頻度を野生株と比較したところ、PB1-L66Vは変異を生じにくく、PB1-S98Aは変異を生じやすいことが明らかとなった。 PB1-L66VおよびPB1-S98Aの複製忠実度が変化した原因が、宿主因子や他のウイルス因子との相互作用に起因するのか、あるいは変異体のウイルスポリメラーゼ自身に起因するかが定かではない。そこで、各変異体についてin vitroによる複製忠実度の比較実験を行ったところ、培養細胞を使用した実験と同様に、PB1-L66Vは野生型と比較して変異を生じにくく、PB1-S98Aは変異を生じやすいことが明らかとなった。以上より、これらの変異株の複製忠実度が変動した要因は、変異体のウイルスポリメラーゼ自身の性質であることが示唆された。各変異体について、CTPに対するKm値を求めたところ、PB1-L66Vは野生型と比べて約9倍上昇していた。これより、PB1-L66Vは基質との親和性が低下することで基質の選択性が向上したことが示唆された。一方、PB1-S98AのCTPに対するKm値は野生型と差が無かったことから、PB1-L66Vとは異なるメカニズムによって複製忠実度が制御されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼと複製忠実度の関連について研究を進めるため、独自の実験系を構築し、ウイルスポリメラーゼにおいて複製忠実度の決定に関与するアミノ酸を複数同定した。各変異体ウイルスポリメラーゼにおいて生化学的な解析を行い、複製忠実度が制御されるメカニズムの一部を明らかにしたことは当初の計画通りであり、順調に計画が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き同定したアミノ酸の複製忠実度に影響を及ぼすメカニズムについて、生化学的に明らかにしていく。また、動物個体においても培養細胞で得られた表現型が再現できるか試みるとともに、ウイルス集団の多様性と病原性の相関について明らかにしていく。
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Remarks |
http://www.bikaken.or.jp/
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