2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J10660
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 佳織 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 栄養バランス / 個体の成長 / マルチオミックス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
全ての生物は絶えず変化する環境要因にさらされており、その主な要因の一つは栄養である。近年、低栄養あるいは過剰な栄養の摂取が大きな問題となっており、発生に与える影響について様々なモデルを用いて研究されている。しかし、栄養素の「バランス」については、その変化を個体が感知する仕組みや、その結果引き起こされる応答、そして個体の成長に与える影響など、明らかになっていない点が多い。 本研究では、栄養バランス変化に対する応答が個体の成長に果たす役割の解明を目的とした。キイロショウジョウバエは自然界では発酵した多種類の果物を食べ(広食性)、適応できる栄養条件の幅が広い。一方でその近縁種には、特定の植物のみを食性とする狭食性の種も存在する。そこで、これらの近縁種を用いて栄養バランス変化への応答を対比させたところ、広食性種はどの餌条件でも発生できるのに対し、狭食性種は炭水化物の多い餌で発生できないことを見出した。このとき食餌間の遺伝子発現をRNA-seqにより比較した結果、狭食性種の発生率が低下する餌で、広食性種でのみ発現が上昇する広食性応答遺伝子群を同定した。また、近縁2種でのメタボローム解析により食餌間での代謝産物を比較した結果、高炭水化物食条件下の狭食性種では、解糖系や TCA 回路の中間代謝産物が増加していることが分かった。平成28年度の新たな課題として、狭食性種の発生率低下に寄与する栄養バランスの構成因子を調べるとともに、栄養バランス変化に応じて活性化するシグナル伝達経路の探索を行った。その結果絞り込まれた全身性のシグナル伝達経路の候補について、キイロショウジョウバエの変異体を用いた機能解析を進めた。我々は、このシグナル伝達経路の違いが、栄養バランス変化に対する広食性・狭食性の種間の適応能力の違いを生み出すとの仮説を立てている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以前から行っていた、栄養バランス変化への適応に対する広食性・狭食性の種間比較解析に加えて、この種間の違いを生み出す原因となる上流経路の絞り込みとその検証にまで研究を発展させた。当初平成29年度に予定していた、候補上流経路の構成因子のキイロショウジョウバエ変異体を用いた機能解析についても進めることができた。今後、広食性種と狭食性種では、このシグナル伝達経路内のどのステップが異なるために、栄養バランス変化に適応できる・できないが決まっているのかについて明らかにしていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述した 2016 年度までの研究成果をもとに、栄養バランス変化への適応に貢献する全身性シグナル伝達経路の標的組織の探索を行っている。このような標的組織が同定できた場合、下流に存在するシグナル伝達因子の細胞内で核移行する程度やリン酸化状態について検証する。さらに、広食性種と狭食性種では、このシグナル伝達経路内のどのステップに違いがあるのかを明らかにする。具体的には、候補経路のリガンドや受容体をコードする遺伝子の発現、タンパク質量などに種間で違いがないかを調べる。以上の検証により、広食性種が栄養依存的に遺伝子発現を調節し、代謝恒常性を維持する機構の解明を目指す。
|
Research Products
(13 results)