2016 Fiscal Year Annual Research Report
がんの特異的代謝に着目した汎用性の高い革新的リガンド分子の開発
Project/Area Number |
16J10727
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 直生 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 高分子 / グルタミントランスポーター / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、がん特異的なグルタミン代謝に着目し、がん特異性と汎用性を併せ持つ新規リガンド分子を開発することである。今年度はグルタミン-高分子リガンドの基本設計を確立することを目標とした。まず高分子鎖長が異なる種々のグルタミン-高分子リガンドを合成し、それらのヒト由来膵臓がん細胞(グルタミントランスポーターを過剰発現している)における細胞内取り込みをフローサイトメーターを用いて評価した。高分子鎖長が100のリガンド分子は長さが50および30のリガンド分子と比べ顕著に取り込み量が増大した。さらに高分子鎖長が100のリガンド分子の膵臓がん細胞における取り込みは正常細胞のおよそ5倍であった。このことから、至適な長さを有するグルタミン-高分子リガンドはがん選択的に強く相互作用することが示唆された。また、分子量と電荷が等しく側鎖の化学構造のみが異なるコントロールリガンドとの比較においてもグルタミン-高分子リガンドは有意に高い細胞内取り込みを示したことから、グルタミン-高分子リガンドの取り込み増大は側鎖のグルタミン構造に起因することが示唆された。さらにこのグルタミン-高分子リガンドとがん細胞との相互作用では、がん細胞において過剰発現しているグルタミントランスポーターが大きな役割を担っていることも明らかにした。グルタミン-高分子リガンドとがん細胞との相互作用の強さは既存のリガンド分子と同程度の強さであり、腫瘍へグルタミン-高分子リガンドを局所注射した際には腫瘍部で長期に渡り残存したことから、グルタミン-高分子リガンドは生体内においても十分に腫瘍と相互作用することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、今年度はリガンド分子の基本設計の確立を目標とした。合成したリガンド分子を培養細胞や実験動物などの生体を用いて評価し、その結果を適宜フィードバックすることで、がんと強く相互作用するリガンド分子の基本構造を築き上げた。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度合成したグルタミン-高分子リガンドは生体内においても腫瘍と強く相互作用することが期待される一方で、分子量が腎排泄の閾値よりも小さいために静脈投与では速やかに排泄されてしまうという懸念がある。今後はこの懸念を解消すべく適度な血中滞留性を有し、かつがん選択的な相互作用を維持するような分子構造の改良を図る。具体的にはスペーサー分子の導入やリガンド分子末端に生体適合性高分子の導入などにより、分子量の増大を狙う。構造最適化が完了したリガンド分子については、種々のがん細胞を用いた細胞レベル・動物レベルの実験を通じて汎用性の確認を行う。また、本研究で創生したリガンド分子を用いた薬物送達システムの開発についても検討していく予定である。
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