2017 Fiscal Year Annual Research Report
脳組織内精密ターゲティングを目指した薬物送達キャリアの開発
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16J10734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 真緒 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 薬物送達システム / 血液脳関門 / 中枢神経疾患 / 高分子 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、血液脳関門(BBB)を効率よく通過し、かつ脳組織内の標的細胞・部位に到達可能な薬物送達キャリアプラットフォームを構築することである。平成29年度は、【1】ミセルへのセカンドリガンドの導入と、【2】モデル薬剤分子としてのmRNAの搭載に関する研究を遂行することができた。以下にその詳細を述べる。 【1】一昨年度に選定・合成した5種類のセカンドリガンドを、それぞれブロック共重合体の末端に結合させた。これらのセカンドリガンドで修飾されたブロック共重合体とBBB突破のためのグルコースリガンドで修飾されたブロック共重合体、およびリガンドを結合していないブロック共重合体を混合することによって、その表面に任意の割合で複数のリガンド分子を有するポリイオンコンプレックス(PIC)型ミセルの調製が可能であった。これらのミセルを用いてリガンド密度の最適化を行ったところ、疎水性の高い分子をセカンドリガンドとして用いた場合には、その割合を増加させすぎるとグルコースリガンド分子のはたらきを阻害してしまう可能性があることが示された。現在は、これらの最適化したミセルを用いた動物実験の実施準備中である。 【2】まず、mRNAとの相互作用を増大させるため、mRNA中のリン酸基と強く相互作用することが知られているグアニジノ基をブロック共重合体へ導入した。この新規ブロック共重合体とmRNAを混合することにより、PIC型ミセルが調製可能であった。これらの安定性評価を行ったところ、当初の期待通り、グアニジノ基の導入率が高いミセルほど高い安定性を示すことが確認された。さらに、安定性の増大に対応して、細胞内でのタンパク質発現効率も高まることが確認された。現在、これらのmRNA内包ミセルを前述のセカンドリガンドで修飾することによって、培養した脳切片中での高効率なタンパク質発現が実現されるか検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、セカンドリガンドのミセルへの導入とその表面密度の最適化についての検討、およびモデル薬剤分子であるmRNAの搭載に関する実験を実施できたことから、おおむね当初の予定通りに進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
リガンドの割合の最適化を行ったミセルについては、培養した脳切片を用いたex vivoの評価系を用いて、その選択性・標的能を詳細に評価する。また、モデル動物にこれらのミセルを投与することによって、その血中滞留性や臓器分布についても評価する。さらに、in vivoリアルタイム共焦点レーザー顕微鏡を用いることで、ミセルの血中での状態や脳への移行プロセスを非侵襲的かつ経時的に観察する。最終的には、脳組織切片を作成し免疫染色を施すことで、蛍光顕微鏡観察によりミセルが集積した細胞種・部位を確認し、そのin vivoでの標的能を評価する。 mRNAを搭載したミセルについては、その表面を細胞取り込みを促進する効果があることが確認されているセカンドリガンドで修飾する。これを培養した脳切片に接触させることにより、脳切片中でのタンパク質発現効率を評価する。
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