2017 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波共振法を用いた有機半導体材料の界面局所伝導度測定法の開発
Project/Area Number |
16J10857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
筒井 祐介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 有機半導体 / マイクロ波 / 界面 / 移動度 / TRMC |
Outline of Annual Research Achievements |
電界効果トランジスタ(FET)や発光ダイオード(LED)の素子形成において、特に近年では電荷注入層や電荷輸送層、発光層などそれぞれの機能を持たせることで多層化が進んでいる。このような多層の素子において、層間の電荷注入過程は重要なプロセスである。本研究では、マイクロ波を用いた電気伝導度の非接触計測法であるField-Induced Time-Resolved Microwave Conductivity(FI-TRMC)測定において、インピーダンス分光法との協奏すなわち電流とマイクロ波応答の周波数依存性を同時評価することにより、有機半導体への注入障壁の定量評価を可能とした。FI-TRMC測定では、作成したMIS素子をX-バンドマイクロ波空洞共振器内部に挿入し、ゲート電圧Vg印加に伴って半導体層に蓄積されるキャリアによる誘電損失を、共振器からの反射マイクロ波電力の変化量ΔPrと、素子に流れる電流Iの同時測定により見積もった。ゲート電圧としてバイアスした正弦波電圧を加え、ΔPrとIの振幅及び位相の周波数依存性を調べた。MIS素子を半導体層、絶縁層をそれぞれ1つのRC並列回路でモデル化し、終端抵抗Rと直列に接続した回路モデルを考えることで、実験結果をよく再現する回路定数を得ることができた。共振器に低温窒素ガスを導入することで、温度変化による回路定数の変化を解析したところ、温度低下に伴いC8-BTBT膜に起因する抵抗が急激に増加した。Richardson-Schottkyモデルにより注入抵抗の温度依存性を解析すると、注入障壁が0.4 eVと見積もられ、金薄膜からC8-BTBTへの注入障壁が極めて大きいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FI-TRMC測定法を有機材料に適用し、空洞共振器からの反射マイクロ波に対する二次摂動を考慮に入れる事により複素伝導度の測定を可能にした。これにより有機半導体中を流れるキャリアの種類を分離した。加えて、昨年度開発した温度変調FI-TRMC法とインピーダンス分光法を組み合わせることにより、有機半導体材料の異方的伝導を同時に測定すること、また界面での電荷注入プロセスの測定を可能とした。これらのことがらから申請者の当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
粒界の影響を受けにくく、界面特性を選択的に測定できるというFI-TRMC法の特徴を生かし、絶縁層が電荷輸送に与える影響を調べる。通常有機半導体がFETとして用いられる場合、その電荷輸送チャネルは絶縁層に接する界面に形成される。そのため、絶縁層によってはそのFET特性に大きく影響を与えると考えられる。特に低電圧駆動のFET開発においてはこういったトラップの分布がクリティカルな影響を受ける。 また、上述の通りFI-TRMC法は界面の特性だけでなく、インピーダンス分光法と組み合わせることにより、物質間の界面とバルク中の伝導特性を切り分けることが可能であった。インピーダンス分光法を採用すればロックインアンプを利用することが可能であるためさらなる感度向上が期待される。この手法を用いて、P/N接合系について界面の電荷輸送特性の評価法としても展開を図る。
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