2017 Fiscal Year Annual Research Report
人工環化mRNAを用いた生体内標的細胞特異的な遺伝子発現制御技術の開発
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16J10865
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 俊輔 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | mRNA / RNA結合タンパク質 / miRNA応答 / 合成生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、BNA修飾型オリゴ核酸のライゲーションが困難であったことからmRNAの5’及び3’末端配列で特定の内在性タンパク質が結合する特異的な構造(アプタマー)を形成するよう設計し、標的タンパク質存在下で環化される戦略を考案した。その際に、タンパク質に結合し翻訳を制御できるRNA配列を取得する新たなスクリーニング手法を開発した。L7Aeタンパク質をモデルとして本スクリーニング系を用いると、その結合配列モチーフであるBoxC及びBoxDが濃縮されてくることが明らかとなり、コンセプトが証明された。現在は、ヒト細胞ライセートを用いた系へと発展させ、その成熟化に取り組んでいる。また、もう一つの環化手法として、[3+2]双極子付加環化反応を利用した方法を考案した。この手法ではmiRNAの標的配列を入れておけば、その部分の開裂により環化が解け、余分な部分がヌクレアーゼにより処理され、翻訳が開始される形態となる。そのため、理論的にはmiRNA標的配列だけでなく、様々な核酸素子を組み込むことが可能となり、当初の想定を超える汎用性が期待される。現在、TLCを用いて、アジド基を有する化合物とDBCOを有する化合物で反応条件の最適化を進めている。マウスを用いたin vivo実験において、まずmRNAを効率的に肝臓に送達するためのデリバリー単体を複数検討した。化学修飾した蛍ルシフェラーゼをコードしたmRNAをC57BL/6Jマウスに150 mg/headで投与し、4時間後に発光を評価した。その結果、VIROMER in vivoにおいてルシフェラーゼの活性を肝臓で強く検出することができた。現在、miR-122応答配列を1-4カセット組み込んだmRNAを作成し、基本的な発現量の減弱度合いなどを評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、BNA修飾型オリゴ核酸のライゲーションが困難であり、当初予定されていた手法自体が困難であると考えられた。しかし、現在は2つの新規手法を考案し、両方法について検討している。特にクリックケミストリーを利用した手法は、理論的にはmiRNA標的配列だけでなく、様々な核酸素子を組み込むことが可能となり、当初の想定を超える汎用性が期待される。現在使用しているDIBO基とアジド基の反応効率は低いが、これは反応条件を整えることで容易に改善される。また、in vivo実験において、若干の遅れはあるが、概ね順調に進捗している。mRNAに対する免疫応答は1-methylpseudouridinなど市販されているものでは改善されなかったが、この免疫応答の原因はカラムでは精製しきれていないsmall RNAが原因であると考えられる。これは逆相HPLCで精製することで容易に解決できる。また、mRNAの5’UTRにmiR-122応答配列を1-4カセット組み込んだものを作成した。その際に、カセット数を一定にし、配列長を揃えるために、miR-122の応答配列をランダム化した配列を用意し、mRNAに必要数組み込んだが応答配列をランダム化した配列もmiR-122 mimicに応答することが明らかとなった。これを改善すべく、ランダム化の方法や5'UTRの構成について取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方策として、第一に環化手法を成熟化させる。クリック反応を利用した手法は先に述べるように、miRNA標的配列だけでなく、様々な核酸素子を組み込むことが可能となり、当初の想定を超える汎用性が期待される。それゆえ、この反応条件を最適化し、簡便に環化mRNAを作成する。その後、細胞系にて発現量や標的miRNAに対する応答性を検討し、in vivoでの検討にシフトする。in vivoの実験においては現在検討中である直鎖mRNAのmiRNA応答性を検討し、基本的な発現量の減弱度合いとON/OFF比が最大となるカセット数を検討する。またコントロールのmRNAの5'UTRに挿入するmiRNAコントロール配列についてもランダム化の方法や5'UTRの構成について考察する。
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