2016 Fiscal Year Annual Research Report
堆積物が持つ記録の時間分解能を定量化する手法の開発及び一般化
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16J10887
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 圭太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 生物擾乱 / 年縞 / 水月湖 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震・噴火.洪水などの大規模自然現象及び気候変動の履歴復元やこれらの将来予測の高度化に向けて,堆積物が持つ記録の時間分解能を定量化する手法の開発及びその一般化を目的に,2014年に福井県水月湖で掘削された複数の堆積コアサンプル用いて研究を行った.H28年度は対比モデルについて微修正を行うとともに,Mclean et al. (2016, Quaternary Science Review) の火山灰を用いた水月湖の堆積コアとグリーランド氷床コアとの対比に基づく最新の年代モデルへの更新を行った.これらの対比・年代モデルのに基づき,高解像度のコア画像から堆積構造を抽出した.抽出の結果,堆積構造は色変化に基づくエッジ抽出法を用いることで効率よく抽出することができ,また年縞構造の水平長分布は指数分布に従うことが明らかとなった.さらにこれらの結果に対してBroken Stick Modelに基づく1次元シミュレーションを組み合わせることで,生物活動に伴う堆積物の擾乱量の推定を行った.擾乱量の推定は層相から安定的な湖水域で堆積したと考えられる深度約0-63 mの堆積物のうち,堆積速度が大きく異なる洪水や噴火などに伴う層厚5 mm以上のイベント堆積物を除いた堆積物に対して行った.その結果,新手法で推定された擾乱量は観察される層相変化とよく対応しており,また実スケールの層相観察からは評価が難しい連続的な変化や長期変化にもよく対応することが明らかとなった.これらの結果は,さらに検証は必要なものの,堆積記録の時間分解能に影響を与える擾乱量は堆積構造から推定可能なことを意味しており,今後の堆積記録の解釈の高度化に大きく寄与するものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1.堆積物の掘削及びサンプリング,2.コア間対比及び年代モデルの適用,3.年縞の堆積構造を用いた上下の擾乱率及び時間分解能の推定,4.火山灰を用いた時間分解能の推定法の一般化の4つのステージから構成される.ステージ1及び2については計画通り完了し,その成果は現在国際誌に投稿中である.一方で,ステージ3については長所の計画から微修正を行った.当初,葉理構造の明瞭さ(土色の分散)は擾乱率と相関するものと考えられたが,実際には気候変動に起因する有機物含有量の変化に伴う色調変化が大きく寄与していることが明らかとなった.そこで本研究では堆積構造に着目することで擾乱率を推定し,結果としてより実態に即した擾乱率の定量化を可能とした.したがって一部に微修正があったものの,各ステージに置ける課題は計画通り達成できており,全体の進捗としては概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は初生堆積構造の推定が容易な年縞堆積物を使用し,その特徴を活かすことでその擾乱量の推定を試みた.しかしながら,本手法のみでは明瞭な葉理構造の少ない堆積物の擾乱量の推定は困難である.そこで本研究は次のステージとして,粒度分布から擾乱量及び時間分解能の推定を目指す.現在のところ,本研究は内容的にも時間的にも概ね計画通り進行している.そのためH29年度は粒度分析を行うとともに,その結果を定量化した擾乱量と比較することで,その関係性を明らかにしたい.また最終年度であるため,得られた成果を取りまとめるとともに,成果発表にも積極的に行いたい
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Research Products
(3 results)