2017 Fiscal Year Annual Research Report
生体内微小環境とのクロストークによる肥満細胞の新規腫瘍化メカニズムの解明
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16J10993
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
雨貝 陽介 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 肥満細胞 / 腫瘍 / 低酸素 / 免疫回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は肥満細胞の腫瘍化における細胞の恒常的増殖シグナルや、生体内における腫瘍の環境適応としての低酸素応答や代謝変化、免疫細胞との相互作用の解析を通して腫瘍細胞の生存戦略を明らかにすることを目指すものである。平成29年度は皮膚内環境が著しく低酸素状態にあることを踏まえ、低酸素応答に関する詳細な解析を行った。その結果、肥満細胞は低酸素に対し血管内皮誘導因子(VEGF)をはじめとする複数の血管新生誘導因子を発現することが明らかになった。低酸素状態において肥満細胞は低酸素誘導因子(HIF1a)を顕著に発現し、その発現抑制によりVEGFの転写も顕著に低下したことから、同経路が血管新生誘導因子発現において重要な因子の1つであることが示唆された。また、腫瘍や炎症状態の皮膚環境で暴露される刺激を想定し複数の炎症刺激に対する細胞応答の解析もおこなったところ、これでもVEGFを含む複数の血管新生誘導因子発現を認め、因子によっては低酸素応答との相乗効果も認められた。これら知見は腫瘍のみならず広く炎症性環境にある肥満細胞が炎症促進的に血管誘導を行う可能性を示唆するものであり、局所炎症状態の修飾要素としての肥満細胞の重要性が明らかにされたものと考えられる。 さらに、肥満細胞においては広く免疫抑制分子の1つであるprogrammed death-1 ligand 1(PD-L1)を細胞表面に発現することを見出し、これを受け本年度はCRISPR/Cas9技術を用いてPD-L1ノックアウト肥満細胞腫瘍株を樹立した。次年度PD-L1の有無による免疫応答の差異をin vivo実験を中心に展開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験が順調に進捗しており、最終年度での研究成果が見込まれるため。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素応答に関してヒト初代培養肥満細胞やイヌ肥満細胞株など、種を超えて広く一般性を有するか検証を行うとともに、肥満細胞に由来する血管新生誘導因子産生が炎症状態を引き起こす原因となり得るのか遺伝子発現制御した初代培養肥満細胞を用いてin vivoで検証する。また、炎症性疾患や腫瘍の臨床検体組織においても同様の現象が認められるのか主に免疫組織化学染色を用いて検証する。さらにPD-L1ノックアウト細胞に対する免疫応答の差異と腫瘍増殖に対する影響をin vivoにて解析する。このような計画により、特に腫瘍・炎症性環境における肥満細胞応答とその意義を明らかにする予定である。
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[Journal Article] Mast cell hyperactivity underpins the development of oxygen-induced retinopathy2017
Author(s)
Matsuda Kenshiro, Okamoto Noriko, Kondo Masatoshi, Arkwright D. Peter, Karasawa Kaoru, Ishizaka Saori, Yokota Shinichi, Matsuda Akira, Jung Kyungsook, Oida Kumiko, Amagai Yosuke, Jang Hyosun, (他7名), Tanaka Akane, Matsuda Hiroshi
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Journal Title
Journal of Clinical Investigation
Volume: 127
Pages: 3987~4000
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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