2016 Fiscal Year Annual Research Report
家族内発症例の遺伝的要因の同定を基盤とした骨髄増殖性腫瘍発症機序の解明
Project/Area Number |
16J11017
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
竹井 拓 順天堂大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 骨髄増殖性腫瘍 / 家族性疾患 / 全ゲノム解析 / iPS細胞 / ゲノム編集 / 分化誘導 / 病態モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
造血器腫瘍の一つである骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms: MPN)は、後天的な機能獲得型変異(ドライバー変異と呼ぶ)によって、造血幹細胞が腫瘍化することで骨髄球系細胞の異常な増殖を引き起こし、患者のQOLを著しく低下させる。本研究は、家族内でMPNを多発する症例を足がかりに、家族性MPN患者と非発症者を対象にした全ゲノム解析と、患者由来の遺伝情報が保存されるiPS細胞と分化誘導技術を用いることで、MPNの分子基盤を明らかにすることを目的とする。 本年度は、4名の家族性MPN患者と2名の非発症者からiPS細胞の樹立を試みたところ、未分化マーカーを発現し、血球細胞に効率良く分化するiPS細胞株を複数株樹立することに成功した。樹立したiPS細胞を用いて、試験管レベルにおいてMPNの病態を再現するような血球分化誘導方法の構築を目指したところ、サイトカイン非依存的に骨髄球系細胞が産生されたことを、フローサイトメトリーとコロニーアッセイを用いて評価することに成功し、MPNに特徴的な表現型を再現するに至った。さらに、樹立したiPS細胞を対象にゲノム編集を行う際に、CRISPR/Cas9システムを用いることにし、ドライバー変異を導入するようなCRISPR/Cas9ベクターを構築した。構築したCRISPR/Cas9ベクターが、標的となるドライバー変異近傍の配列を特異的に切断する活性を有することを細胞株レベルで示し、iPS細胞にも利用できる可能性を示した。最後に、家族性MPN患者と非発症者の末梢血中の細胞から抽出したDNAを対象に、次世代シーケンサーを用いて全ゲノム解析を実施した。現在、ドライバー変異と家族性MPNに保存されると考えられる遺伝学的要素(プレ因子と呼ぶ)の抽出を試みているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り、家族性MPN患者と家族内非発症者からのiPS細胞の樹立に成功するとともに、家族内の発症者と非発症者から抽出したDNAを用いて全ゲノム解析を実施することができた。また、全ゲノム解析により得られたリードデータをもとに、非発症者には見られず発症者にのみ見られるような遺伝子変異を抽出する段階まで到達している。さらに、次年度から実施予定であった、MPN患者から樹立したiPS細胞を用いて、試験管内におけるMPN病態モデルの分化誘導系の構築にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ドライバー変異を導入するCRISPR/Cas9ベクターを樹立したiPS細胞へ導入し、野生型配列からドライバー変異の配列に置き換わったiPS細胞株の獲得を目指す。CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集により、ドライバー変異を導入したiPS細胞と導入していないiPS細胞とで、確立した分化誘導系に供試して表現型を比較することで、ドライバー変異とプレ因子の役割をそれぞれ明らかにする。一方で、全ゲノム配列解析の結果得られたリードデータをもとに、プレ因子の候補を絞り込み、家族内発症の原因と考えられるプレ因子の候補を同定する。
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