2016 Fiscal Year Annual Research Report
末端アルキンとホウ素化合物による高効率・高立体選択的分子変換反応の開発
Project/Area Number |
16J11026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中室 貴幸 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ロジウム / 末端アルキン / 立体選択的反応 / トリアゾール / アルドール |
Outline of Annual Research Achievements |
末端アルキンとホウ素化合物による高効率・高立体選択的分子変換反応を開発するべく、研究を進めた。まずはホウ素試薬の反応性を評価するために、末端アルキンから容易に誘導することができるN-スルホニルトリアゾールを用いて検討を行った。すると、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナンとアリルボロン酸エステルは良い反応活性を示し、それぞれホウ素アザエノラート誘導体及びシクロプロピルイミン誘導体が高立体選択的に得られることがわかった。このようにして合成されたホウ素アザエノラートにおいて、導入されるホウ素部位がルイス酸的にアルデヒドを活性化することができ、新規アザアルドール反応へと展開することが可能であった。その知見を応用して、末端アルキンとアジド化合物の [3+2]-付加環化反応、ロジウム触媒によるB-H挿入反応、アルデヒドとのアザアルドール反応つづくイミンへのGrignard試薬の反応のように4つの反応をワンポットで連続的に行うことによって、3つの立体中心が連続したアミノアルコール化合物を高立体選択的に合成する手法を開発した。4つの反応が効率的に進行するように最適化した結果、末端アルキンからアミノアルコール誘導体への高立体選択的反応を実現することができた。 また、シクロプロピルイミン誘導体は不安定なイミノ部位を還元したのちに、ボロン酸エステル部位を起点とした様々な変換反応を行うことができた。例えば、アルコールへの酸化、鈴木・宮浦クロスカップリングによるアリール基の導入、銀触媒によるラジカル的フッ素化反応及びリン酸による開環反応などへと展開した。この反応系においてホウ素の反応多様性を利用することにより、生理活性を有することが知られているシクロプロピルメチルアミン骨格を高立体選択的に合成する手法を開発することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、末端アルキンとホウ素化合物を利用した高効率・高立体選択的反応を開発し、この結果を国際化学会誌に投稿した。9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナンのトリアゾールへのB-H挿入反応によって、アルジミン由来のホウ素アザエノラート種を合成することができた。従来、アルデヒド及びアルジミンからは自己縮合の問題でエノラート種を合成することは困難であった。今回の手法では、末端アルキンを原料として調製することが可能であり、新規アザエノラート種の合成及びその立体構造を決定することができた。つづくアザアルドール反応では、舟形の遷移状態を経由し、イミノアルコール誘導体へと高立体選択的に変換することができた。本手法は、エノラート種の新たな合成経路を提案することとなり、今後の応用が期待できる結果であるといえる。 つづいて、N-スルホニルトリアゾールとアリルピナコールボロン酸エステルの反応により、四級不斉炭素を有する化合物を極めて高い立体選択性で合成することができた(up to 99% ee)。またホウ素の反応多様性を利用することにより、アルコールやフェニル基などの多様な官能基をその立体情報を損なわず導入できた。それだけでなく、ホウ素官能基を残したまま、インドリンやテトラヒドロイソキノリン骨格を構築する反応を見出した。総じて、高い立体選択性で4級不斉炭素を構築し、ホウ素置換基の多様性を利用した様々な化合物を合成した。 最近では、基質検討中にベンゼン環上にビニル基が置換したトリアゾールを用いることにより立体選択的に環化三量化反応が進行することを見出し、この反応について詳細に検討している途中である。このように当初想定した反応系を確立しただけでなく、新たな立体選択的反応を見出しており、本研究計画以上の進展がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
ホウ素アザエノラートの研究に関しては、前回まではロジウム触媒を用いることによってアルキルホウ素化合物が立体選択的にN-スルホニルトリアゾールから生成する金属カルベン錯体に挿入する反応を報告している。最近、他の触媒系を用いることにより、異なるホウ素アザエノラート誘導体が立体選択的に生成する反応を見出している。このアザエノラートは、アザアルドール反応においても異なった生成物を与える条件がわかっており、今後その反応機構について詳細に検討する予定である。また前回まで適用できなかった基質でも反応が進行することがわかってきており、更なる発展が見込まれる。 また、検討過程で見出した立体選択的なC3-対称性を有する大環状化合物合成法に関しても検討を行う予定である。異なる芳香族リンカー、またクリプトキラリティーを有する化合物を中心に合成し、その物性などを測定する予定である。
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