2016 Fiscal Year Annual Research Report
皮質ニューロン発生時の細胞移動に伴う核運動の力学・分子機構の解析
Project/Area Number |
16J11143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
呉 攸 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 神経科学 / 細胞移動 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、神経細胞移動における細胞核の運動メカニズムを明らかにすることを目指す。脳の構造形成と機能発現のためには、その発生過程において新たに誕生した神経細胞が適切な位置へ移動しなければならない。神経細胞の核移動は細胞骨格系によって制御されると考えられているが、それを駆動する力の実態は未だ明らかになっていない。これまでに核自身の動態に注目して経時観察を行い、核が移動だけでなく頻繁に回転や変形といった挙動を示すことを見出し、また回転の性質を解析することで移動と回転に必要な力に相関があることが判明した。本年度は、細胞骨格系および関連分子の機能阻害下における核の動態を解析し、核の回転はアクチン骨格系ではなく主として微小管骨格系によって制御されていることを明らかにした。さらに、2種の微小管モータータンパク質、ダイニンおよびキネシンの双方が核運動の制御に関わることを見出した。核の回転方向がランダムかつ非連続であり、核の前後で見られる変形が異なることから、微小管と核はダイニンやキネシンを介して結合・解離し、散発的に発生する核前方からの牽引力の大きさや向きに応じて移動や回転、変形が引き起こされると推測された。一方で、核の移動には微小管骨格系だけでなくアクチン骨格系も必須であることを明らかにした。以上より、神経細胞移動時において核の運動はアクチン系と微小管系によって協調的に制御されるが、その作用機構は少なくとも部分的に独立であり、これら2種の細胞骨格系が発生させる力は、その大きさや向きといった性質が異なることが示唆された。また、ラミンの強制発現下において核の運動様式が変化したことから、細胞骨格系による制御とは別に、核自身の硬さが細胞移動に影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞移動時における核の移動と回転という動態の差異に注目し、細胞骨格系の挙動観察や分子阻害によって、アクチン骨格系と微小管骨格系の双方が、それぞれ異なる機構によって核運動の制御に関与することを示した。また、核の柔らかさが細胞移動に影響する可能性を示唆する結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
ラミン発現操作下において観察された核の動態変化について定量解析を進める。それと共に核の物理的な性質を測定し、神経細胞移動における核自身の硬さ・弾性等の影響を明らかにする。また、三次元培養等によって外部から抵抗を受ける環境下で移動する細胞の核の挙動を解析し、内外からの力が核移動に及ぼす影響を検討する。
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Research Products
(2 results)